第19話 聖騎士の憂鬱
「何で私が、こんな所に、こんなことをしなければならないのだ?」
彼女は、ソロン郡に来てから、何度も自問した。ハーレムを作った最低男とそれに満足してハイエルフの誇りを失った売女達の監視など、自分のハイエルフ、聖騎士の誇りが許さなかった。
「皇太子殿下直々の命でなければ!」
とも思うと、なおさら腹が立ってくる。階級も特昇、俸給も特別に大幅増、しかも復帰後のことも確約されている。文句は言えないが、それがなおさら腹がたつ。
「早く…、手っ取り早く…。」
着いてみれば、予想通りの辺境の地。騎士団は、正騎士達の集団だから一応の規律はあったが、それ以外は雑多な、規律も、士気すら欠けた集団だった。自警団、民兵、義勇兵、市民兵を正規兵と比較しても酷なのだが、彼女は同列に比較していた。統治も、情義がまかり通り、先例、慣習が優先、領主は、自分の館の改修も有力者から提供を受けていた。すべてが姑息な、小手先の統治に過ぎなかった?遅々としてしか進まない、道路、用水路、河川改修事業。一向に決定できない集まりに決定を委ねるという自分では決められない優柔不断さ。
背が平均より高いばかりの平凡以下の顔立ちと黒髪、なんのオーラも優れたところが、見受けられない男、それがハイエルフのハーレムを作っていると言うだけで、見ていると気持が悪くなる、と彼女は思っている。そんな男のもとでのうのうとしているハイエルフの女達。
「この地のハイエルフどもには、ハイエルフの誇りも無ければ、血も流れていないのだ!」
ちなみに、彼女は西方のハイエルフの部族であり、彼女は高位の貴族の第4子で、友好国であるソロン帝国の軍に士官し、認められた結果だった。異例の昇進だった。出国は元々口減らしでもあったが。
故郷は小なりといえども独立国家だったから、ソロン帝国内で自治権を認められているものの、くみこまれているエルフ、ハイエルフは彼女らは、ハイエルフどころか、エルフの血が、流れていないとまで、嘲笑する傾向があった。
ディオゲネスのハイエルフ女奴隷ハーレムの半数は、一応騎士の勤めを、果たしている。彼らの適性、出身、誇りを考えてのことだというが、喜々として、ことあるごとに裸体をさらして抱かれている、なんの取り柄もない男に。パイステアなどは、ほとんど毎日だ。彼女は、そういう彼女らに愛想が尽きるだけでなく、嫌悪感すら感じる。
「羨ましいんじゃないのかい?」
などと言われると、そんなことを言った奴を殺したくなる。“私と一緒にするな!”
それでも、一月に1回は皇太子に送る報告には、ハイエルフ奴隷達の待遇はよく、彼らは勤めを果たし、公はよく彼女らを大切にしていると書かざるを得なかった。彼女は、嘘は言えないし、嘘は書けなかった。
ただ、このところ、ディオゲネスがハイエルフ奴隷達に触って魔力を高めることができるという話が聞えてくるのだが、その確証をとれず、それが彼女を焦せていた。それは、皇太子が、自分が望む行動の理由となるのではないか、と彼女には思えたので、なおさらだった。
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