第12話 傷ものハイエルフ女奴隷ハーレムのお披露目
「ご主人様?どうしたのですか?」
「その手紙に面白いことが?」
「いや、あちらの奴隷商人からの手紙なんだが、ディオゲネス殿下とハイエルフ女奴隷達のことがね…。」
彼が読んでいる手紙が書かれる数日前、ソロン郡の有力者の主宰するサロンでは、異様な昂奮に包まれていた。ソロン郡西方の端の地の有力者は、彼の巡視があると聞いて、地元のサロンに招いたのだ。そこに、領主であるディオゲネス皇子が、ハイエルフ女奴隷ハーレム全員を連れてくるという話だったからだ。
その彼の一行が来たと、サロンの主の声があがった。誰もが、一斉に入口に視線を向けた。
「今日は、お招きありがとう。」
とサロンの主に、声をかける正装の軍服姿のディオゲネスを、サロンの主である屋敷の婦人が彼の右脇に立って案内する。そして、その反対側には、正装の軍服姿で、副官風のハイエルフの女が寄りそうよう進んだ。まずは、彼女の姿に、
「ほお。」
と感嘆の声があがった。“美しい”まずは、多くが感じた。その魅惑的でいて、均整のとれた容姿に目を細めた。さらに、二人の後に侍女姿だが、豪華な装飾品をつけて、少女のハイエルフに導かれたハイエルフの女二人、それと並んで、やはりハイエルフの少女に支えられながら進む失明しているハイエルフの女二人の姿に、皆は息を呑んだ。侍女姿は高貴さを感じさせる容姿端麗な華やかな美人であり、盲目の二人は神官風の修道女の正装に似た服を着た、対照的に小柄でスリムな体型で、温和しい感じで、かえってそれらが奇妙に調和して神秘的な美人に見えた。しかし、それはつかの間のことに過ぎなかった。
「皆、目立つ傷がありますわね。」
「ディオゲネス様の傍らに立つのなんか、片脚片腕ですわ。あ、神官風の二人も片手か片脚がありませんわ。」
「あの4人、14くらいにしか見えんぞ、まさか。」
ちなみに、他は20代そこそこに見える。後続の者達もそうだった
「いや、あっちは違うらしいぞ。」
「本当かしら?」
ところで、エルフは17歳に見えるくらいなるのは、人間などより早いくらいだ。それ以降の老化は遅く、100歳でも30代後半に見える場合が多い。一方で、100歳まで生きるエルフは、80まで生きる人間より少ない。150歳のエルフは、80歳で矍鑠としている人間よりも少ないし、200歳以上のエルフは、ほとんど寝たきりであるが、例外的に400歳を過ぎても若々しいエルフがいる、あくまでそれは例外である。
「あの娘達も、片脚やら片手。ヒドい傷が。」
「あの正妻顔のハイエルフの傷が、大したことがないように、いえ、全く気にならないと思えてきますわね。」
「あの侍女二人、目が虚ろで、表情もないわね。」
「凌辱されたショックで、壊れたらしわよ。言われたことはできるらしいけど、侍女としても半人前とか。お値段からすれば、御の字でしょうけど。」
「ハイエルフの王族の出だというが、哀れだな。」
そんな囁きが飛び交っていたが、さらに続くハイエルフ達が視線に入ると、内容が変わった。二人が官吏の正装した30代半ばに見える妖艶さがあふれ出ているが、顔に大きな傷がはっきり見えていた、を除く7人は、20歳くらいに見える、容姿の整った女達で、騎士の正装だった。顔がひどい傷ばかりだったり、顔などの半分が爛れていたり、両脚がなく車椅子だった。傷の程度は、様々であったが、最初の女よりも、はっきりひどいという印象だった。
「あそこまでいくと、公の隣の女が、何もないように見えますな。」
「ここまでいくと、抱く気がするかどうか…。」
「元は美人だったんだがな…。」
「あら、どうしてわかるんですの?買おうと下見でもしていたの?」
「傷がなかったらと想像した結果だよ。」
そのうち、彼女らのハープや笛の演奏、歌、優雅な魔法の実演が始まると賞賛の声もあがった。
「やはりハイエルフの歌、音楽なのですね。」
「我々のとは、性格が異なりますが…、素晴らしいものですね。」
「あの顔がなければ、最高なのですが…。」
「魔法も、やはりハイエルフのは洗練されていますね~。使い手の顔で減点ですけどね。」
聞こえといないと思いながら、聞こえよがしの囁き合いに、彼女らは聞こえていない風を装いながら、彼女らは演じていた。
「ハイエルフと、一概に言われましても、色々な部族が、世界各地にいますから…私の部族と周辺の部族のことしかわかりませんし、後はうわさ話とか、伝聞とか、書物とか、伝承でしかありませんが…。」
パイステアが、流暢に理路整然て説明を、ディオゲネスの横で始めると、その周辺に輪ができていた。ハイエルフのことは、彼らの排他性もあり、あまり知られていない。だから、その情報には誰もが強い関心を示すものだった。しかし、彼女のように、第三者のような、そしていて第三者によく分かるような説明を彼女はしてくれた。誰もが興味深そうに、聞き入っていた。
「さすがに、殿下が身近に置かれるだけのことはありますな。」
彼女の説明が一段落すると、酔いがまわった男がディオゲネスの横に座って、酒臭い息を吹きかけながら話しかけてきた。
それに力を得たのか、他の、さらに酔いの回っている男が、二人分のハニーワインを持ってきたが、ニヤニヤしながら、
「それでも、やっぱり、みんな抱いているんですか?皇子様?ええと、18人いますけど?」
言ってきた。誰もが聞きたいが、さすがにはばかりがある質問だった。皆、不快そうな顔をしたが、答えを待っていることは、直ぐ分かった。“まあ、大いに話を広める機会だな。上手く言わないとな。”
こほん、とちょっと顔をしかめてみせてから、口を開いた。
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