第10話 エルフ奴隷達

「それ、突撃!一人も残すな!」

 ディオゲネスが馬上で叫ぶと、呼応する声があがった。100名の正騎士、彼の数少ない家臣達、各村、都市から集められた自警団、義勇兵、臨時に雇った傭兵、さらに志願者が少々は、盗賊団の砦に殺到した。空堀が一重、木の柵があるだけの粗末な造りだったが、それなりの防御力はある。兵士といえる者も100人近くいるとも噂されていた。その中には、魔道士も何人もいたし、腕自慢、力自慢の連中もいた。それに地の利もあった、あったはずである。

 しかし、精鋭の正騎士の集団との差は歴然であり、歴戦のベテラン騎士達に指揮された自警団、義勇兵達はいつもの倍以上の力を発揮した。魔道士や魔法騎士、魔法修道士も目一杯集め、さらに銃火砲も十数門その他の攻城兵器も備えたいた。それが相手では、数の比、100人超対五百人弱、以上の戦力差があった。

 地の利も、既に地元の自警団達を中心に偵察を十分していたから、彼らにはなくなっていた。

 そもそも、盗賊団は、弱い者を襲う集団でしかない。彼らもそれは分かっていた。だが、油断していた。新しい領主が、まず周辺の王領の代官達に兵士の派遣を要請するだろう、それには時間がかかり、大した数は提供されないだろうとみていたのだ。だが、ディオゲネスは、自らの兵士を全て投入し、陣頭指揮で討伐すると言い出した。それを聞くと、各村、各都市も積極的に参加を表明し、参加者の士気も最高に高まった。

 あっという間に、堀は超えられ、柵は打ち砕かれ、中の男女は大半が逃げ腰で、勇敢に向かってくるのは僅かだった。

 僅か一時間で、この地方に悪名を轟かせていた盗賊団は、壊滅した。

 戦いが終わり、残敵捜査が終わると、ディオゲネスは活躍した者達に声をかけた。その中に、3人の男女の志願者達もいた。

 若い奴隷商人と彼の女ダークエルフ奴隷騎士二人だった。

「君たちの奮戦ぶりは目を見張るものだった。」

と言うと、

「閣下には、私と私の奴隷達を助けていただいた恩義があります。幾分ともお返しできたかと思うと嬉しく思います。」

 若いが、利発そうで、端正な顔立ちの、だがやり手でもある奴隷商人は跪いて答えた。

「あの時は、遅すぎたがな…。」

「いえ、そのようなことは…。」

 盗賊団討伐を準備していたディオゲネのもとに、他領に向かう奴隷商人の一行を襲撃しているとの報が入り、彼は周囲の正騎兵達、地元の自警団を率いて救援におもむいた。このような正規兵の投入など考えていなかった盗賊団は、瞬く間に全滅された。だが、救援のため到着した彼の目に映ったのは、奴隷商人の主とダークエルフの女奴隷騎士、そして彼の僅かな使用人が一画に追い詰められながらも抵抗している姿と盗賊団の男女が略奪している姿と、そして、ハイエルフの女奴隷達を残酷に陵辱している姿だった。腕や脚を切断されて、傷だらけにされながら、犯されていた。どのハイエルフ達も、出血多量で死ぬしかないと思われた。

 ハイエルフの奴隷については、ディオゲネの着任、ソロン郡の着任、早々の外から持ち込まれた問題だった。ハイエルフの奴隷への虐待の密告があったのである。性的玩具的な扱いを受けている、というものであった。しかも、誘拐により奴隷とされたのであると。

 奴隷は、この世界は制度として認められているが、保護の規定、法律もある。虐待や嗜虐的な玩具的奴隷などは処罰の対象であるし、正式な手続のない違法奴隷は禁止されている。例えば、誘拐した者を奴隷とすることは、厳罰対象である。ただし、違法行為、違法奴隷は後を絶たない。

 帝国内には、ハイエルフを始めとするエルフ族の部族国家が存在している。帝国の支配を受けているが、ある程度の自治権を与えられている。そのため、その取り扱いは慎重を要することだった。

 ディオゲネスは直ぐに動き、関係者を処罰し、ハイエルフの解放、帰還に努力した。そのついでに、領内の奴隷の扱い、状態の調査を実施したが、次々に問題が見つかった。それが一段落したところに、ハイエルフの女性奴隷を多数連れた奴隷商人の一行が領内を通過した。そういう時だったため、彼自ら立入検査に入った。

 ハイエルフ奴隷は全て女で、ハイエルフ部族の政争によって奴隷となったものばかりで、合法的な奴隷だった。元騎士達どころか、元王族姉妹すらいた。皆若くて、美しかった。

 虐待の痕もなく、健康状態も栄養状態もよかった。それだけに高価で、もっと豊かな地方で売ると若い奴隷商人は言った。

「そのような事情と伝手があって、安価で買い整えあることができました。」

 人懐こい微笑を浮かべながらも、

「酷い主人に買われないようにしてやりたいと思っているのですが。もちろん、そのような闇ルートでの商売はするつもりではありませんが、最後は新しいご主人次第ですから。」

 経歴も、闇ルートでの前科もなかったことから、通行を即座に許可した。

「閣下が、ご所望であれば。閣下なら、安心かと思いますので。」

と申し出たが、価格は高く、人員不足から奴隷での補充も考えていたものの、その時は、

「着任したらばかりでな、そのような互いに買い物はできない、残念だが。」

と笑って断った。

 死が間近とはいえ、その場において置くわけにはいかないため、近くの彼の別邸に彼女らを運び込んだ。そして、彼女らは死を待つばかりだった、だったはずであった。それが、奇跡が起きたのだ。

「ち、違うんです。そ、そんなことを思って…。」

「そ、そうです。あ、あの時は、本当にみんな助かって良かったて思ったんです。」

 二人のダークエルフの女は、盗賊団との戦いぶりからは予想もできない、哀れな小娘のような表情で懇願するように彼女達の主を見つめた。

「分かっているさ。」

 奴隷商人の主は、彼女達を優しく抱きしめた。三人とも全裸だった。彼女達は、つい、ハイエルフ奴隷達があのまま死んでいてくれたら、主が苦労してなかったのにといってしまったのである。その言葉で、優しい主人に嫌われるのではないか、と心配になったのである。

 ハイエルフ奴隷達の商品価値は、ほとんど零になっていた。が養わなければならない。治療費などの負担がかかっているのである。それどころか、足下を見られて、金をもらったら引き取ろうという申し出すらあった。彼らの手に渡ったら、確実に闇ルートの性的玩具にされるだろう。志願兵になったのも、何とか資金を得たかったからだ。主も、日雇い仕事までやっていた。盗賊団で捕虜になった連中は奴隷にされたが、その一部の売却を委託されたが、領主への上納金もあるし、彼の場合は他領での商売となり、その間の経費がかかる。だから、とても足りないのだ。

 ダークエルフの女奴隷二人は、ベッドの端に手をついて、主人の方に尻を突き出し、主人は交互に下半身を彼女達の尻にぶつけて一体になって動き、彼女達は喘ぎ声を出していた。一人の動きが止まるとしばらく主人は動くのをやめて彼女が快感の余韻に浸るのを待った。しばらくして、しきりに尻を振る、もう一人の方に移る。彼女が一段と大きい喘ぎ声を出して動かなくなった後、しばらく動きを止めていたが、余韻が去ったとみるや、また激しく動き始め、

「う。」

と呻いた後、即座にもう一方に移って動いた。全てが終わった後、彼は二人を、後ろから抱きしめて、

「あの時、約束した通り、お前たちを離さない。3人で頑張っていこう。」

「はい。」

「はい。」

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