第8話 お前が馴染んでいるんだ。

 二人はテーブルを挟んで食事をとった。彼女は、軍服、副官の制服を着て、彼も軍服姿で、箸とスプーンを使って食事をしていた。

 料理は、焼いた肉、干した魚、卵焼き、野菜等と米とヒエなどの雑穀、そして芋と豆のスープだった。地元の料理である。彼の母親はこちらの地方の出身であり、彼のというより母親の使用人の多くは、こちらの地方の出身者であり、料理等には彼を含めて、帝都から遠いこの地に違和感は感じてはいなかった。皇族の夕食としては質素過ぎるものだった。この後、菓子や果物のデザートがあり、材質を比べれば庶民よりずっと豪華であるし、毎日メニューが変わる。彼女は、主人と一緒であるから、一緒の時は食べられるが、彼のいない間は他の使用人、家臣達と同様な、ずっと簡素なものを食べている。これとて、庶民から見れば、ずっと恵まれていた。それでも、多少とも裕福な階層の者は、これより上等の食事をとっている。

「私は、こっちの方が好みなんだ。」

 庶民にとっては、かなり上等のワインを飲みなが、彼は尋ねてもいないことを説明した。彼の元からの侍女長が、

「坊ちゃまは昔から…。」

と言っていたのを思い出した。母親の出身地の素材や料理、それも素朴なそれが好みだったらしい。

「それでも、時々、都の白いパンやラム肉のステーキ等が懐かしいと思うことがあるさ。」

と彼は言った。帝都から来た、エルフ聖騎士は、田舎料理、素材に不満たらたらであり、皇子の使用人達も都のそれと比較して、色々な意味でため息をつきがちだった。

 食事をしながら、彼女は彼のいない間の市井の噂等を話し、彼は今回のゴブリン退治等の話を彼女に言った。それは、夫婦の会話のように見えた。“でも、奴隷と主なんだ。”止む得ないとはいえ、彼女は、かつて、希望に満ちた日々をつい思い出していた。“こいつも…主様も同じなのよね。”ついそんな気持で、彼の顔を見つめてしまっていた。

 彼は、その視線に何も言わずに、

「そろそろ風呂に行くか。」

 最後の茶を飲み干して、彼女もカップを置いたの見て言った。

「はい。」

 彼が立ち上がると、彼女もそれに従って立ち上がった。

 脱衣所の中で、彼専用の、別の脱衣所、別にずっと粗雑な造りのがあるが、で、

「ご主人の手先、いやらしいです。」

 彼の、彼女の服を脱がす手先に彼女は恥ずかしそうに抗議した。

「お前の体に興奮しているからだ、いいだろう?」

「毎回ですよ。」

「美しいものは美しい、それにいつも興奮するのは当然だろう?」

「屁理屈ですよ。単にご主人が変態なんです!」

「高名な哲学者の言なのだがな。彼は毎日見る景色でも、感動的に語るので、友人が疑問に感じて質問したところ、美しさは変わるものではないから、それに感動する気持も変わらないはずではないか、と言ったそうだ。」

 そうこうしているうちに、彼は彼女を裸にしてしまった。彼の方は、自分でさっさと裸なり、彼女を引っ張って浴室に入った。

 数人が入れる浴室で、浴槽も3人は楽に湯につかることができる大きさだった。彼が椅子に座ると、彼女は片腕で器用に、浴槽から湯を汲んで、石鹸をつけたタオルで拭き始めた。彼自らもタオルで拭いて、協力(?)した。彼の下半身の前部分もだ。髪まで泡まみれになったところで、

「もういい。」

と彼が命じ、彼女は彼の頭から湯を何度もかけて、泡を流した。

「では交代だ。」

 同様な手順で、主が奴隷女を洗い始めた。いちいち手の動きが怪しいので、彼女は何度も声を漏らし、身をよじらなければならなかった。それでも、ちゃんと洗うという作業ははたしていた。

 ハイエルフとしては、平均より背が高いが、やはり華奢に感じる体だったが、胸の大きさもかなりあり、しまった腰のくびれと形の良い尻、スラリと伸びた片脚、弾力のある白い肌は魅力的だった。

 頭から湯で泡を流し終えると、彼の手から光の玉が浮かび上がった。

「何を?」

「お前の裸を、鑑賞したかったからだ。お前達に触れていると、これの輝きかたが違うな。私一人では、線香の光にしかならないからな。」

 彼はしみじみと鑑賞するといった目だったし、すっかり下半身も元気になっていた。“変態!”と心の中で叫んだが、それに感じている自分もいた。“私も変態ね。”

 鑑賞を終えると、彼は彼女を連れて浴槽に入って、彼女の肩に腕をまわしてくつろぎ、彼女は諦めたように体をあずけて、彼の肩に頭をのせて、目を閉じた。

 二人がでた後は、屋敷の使用人、家臣、奴隷達が順に入ることが許されている。湯がもったいないので。

 その後は、寝酒を飲み、口を洗い、本を読んでから、寝室に二人は入った。

 ベッドに彼女を押し倒した彼は、

「微かにお前の臭いがするな。」

 手で胸の感触を味わいながら、舌を這わせながら言った。

「もう、いい加減に…私は臭くありません!」

「私は、好きなんだからいいではないか?」

「誰にでも言うのですか?」

「ああ、そうだな…しかし…本心で言っているぞ。」

 彼女が喘ぎ声で、文句の言葉が出てこなくなったところで、彼は正常位で一体になった。

「あ…奥に…。」

「う、奥で…。」

と呻いて、二人は激しく動き、快感で彼女は大きな声で喘ぎ声、うめきながら彼は快感に耐えた。

「う。」

「あん。」

 二人の動きが完全に止まった。すかさず彼は、体を入れ替えて、自分が下になり、上になっている彼女を抱きしめた。

「なあ、誰が一番いいとかなんか分からない。その時は、一番いいと常に思う、それだけだ。だがな、お前が馴染んでいるんだ、この関係でな。だから、お前は変わらずに、私に仕えるんだ。」

 まだ、息を荒くしている彼女に言った。その彼女の顔を、理知的な顔が、快感で緩みきっているのを、見て“可愛い”と思った。

 彼女の背を撫でながら、何かを考えようとしても、何も出てこなかった。

 

 

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