第3話 やはり醜いからですか?
「いつも、殿下はあんななのか?」
人間からみても、すこぶるつきの美人で、戦士として全く隙のない動きを、他の騎士達が感じる、エルフの女正騎士は、怒りと嫌悪感丸出しの表情で、傍らの騎士に尋ねた。彼を連れて、早朝から野営地周囲の警戒にまわっていたのである。
「まあ…、いつもというわけではないというか…。」
彼は言いよどんだが、近くにいた騎士が、割って入った。彼は、他の者と朝食を取っていた。そこは、林の中にある広い広場で20人ほどの騎士が野営していた。
「野営地で、殿下に迫るなんてなかったな。」
「しかし、3人まとめてなんて…。」
「いや、二人が天幕の周囲を見張っていたから、一人づつだろう。」
女エルフ聖騎士は、蔑んだような調子で訂正した。
「おいおい…。」
「それで、焼き餅でも焼いたのかい?」
女エルフ聖騎士に睨まれて、皆が震え上がった。
「ま、まあ、あんたも食事にしなさいな。食べ損なうよ。」
女の騎士が取りなすように言った。
「まあ、ご主人様も、あんなのと…趣味が悪いよな。」
皆が苦笑した、一人を除いては。
それは、昨晩のことだった。
ディオゲネスの天幕に、3人の女が、入ってきた。もう従者としての彼の世話は終わっていた。もう下がってよい、と言ったはずだった。どうした?という顔の彼に向かって、しばらく口ごもっていたが、一人が、
「やはり私達が醜いから、抱こうとしないのですか?」
言うと、他の二人も堰が切れたように、
「あの帝都からの女騎士に見せつけるために、親し気に寄り添えなどと言って、あの女に見とれて…。」
「そうです!私達に伽を命じるとかハーレムぶりを示すとか言って、今まで何もせずに、あんまりです。」
3人とも、自分の言葉に恥ずかしくなって、顔を下に向けた。“どのくらいの男が上を通り過ぎたという女達のくせに。”と思いつつもその姿が、ひどく可愛いと心底から思った。
かなりの数のゴブリンの群れが侵入して、村を襲っているという報を受けて、騎士約20名を率いて来援、地元の自警団、郷士、臨時に雇った傭兵達を加えて殲滅を図った。精鋭といえる騎士が、僅か20名とはいえ、それが核になるとその他の兵士達も日頃の倍の力を発揮する。さらに、皇子が陣頭指揮、自ら戦い、それを3人のエルフの女騎士が守るのだから、さらに指揮が士気が上がった。そして、帝都から来たばかりのエルフの女聖騎士の力は、群を抜いていた。まさに一騎当千といえた。だから、作戦は大成功、ついでに周辺の盗賊団や魔獣も退治して、自警団、郷士、傭兵からなる部隊は解散、皇子以下約20名は帰還となった。その途中、もう大丈夫というところで野営、慰労の宴を開いた。地元の有力者から提供を受けた酒や食べ物でのささやかなものだった。半ばを断り、あまり酔うことがない程度にしたからだ。功績のあったものを褒めた。当然、あの女エルフ聖騎士もだが、“確かにいい女だからな…。目が、胸とか…。”彼女に見せるために、ことさら3人にはイチャイャぶりを、ハーレムぶりを見せたかったし、彼女らに命じた。彼女らを抱かなかったのは、安全地帯に入ってからと思っているうちにずるずる来てしまったのである。
「分かった。順番だ、一人づつだ。二人は、見張りだ、わかったな?え~と最初はお前だ。」
顔に酷い傷が幾つも残るメランタを指名した。残りの二人は、不満そうだったが、大人しく従った。
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