第2話 傷物ハイエルフ奴隷ハーレムだと?
「やはり噂は…、あのハーレムの噂は、本当であったか、全く、あの馬鹿息子めが!」
既に60歳にならんとしているが、まだまだ堂々としたターレス帝国皇帝は、報告書を読んで、呆れて苦々しい表情を見せて呟いた。が、その赤髪を逆立てて、怒り狂うというものではなかった。
「傷物のハイエルフの女奴隷達を、安くまとめ買いした?片脚、片腕、顔に傷ありを寵愛?その他は…半身が爛れて…な、なんと…安物買いの銭失いだろうが…。全くしかたがない奴だ。母親が生きていたら、嘆くだろうが…。賢い女であったな…。その息子ともあろう者が・・・。まあ、締まり屋なところは一緒だな。そのおかげで、民も国も富んだが。」
続けて出た言葉には、同情心と面白がって苦笑している感じになっていた。
東南の辺境に飛ばされた皇子、彼の息子の一人であり、辺境に飛ばした命令は皇帝の名で出ている、がハイエルフの女達でハーレムを作ったという噂が、彼がその地について数ヶ月くらいになってから、聞こえてきた。続いて、それがハイエルフ女奴隷達のハーレムという噂が流れてきて、さらには、安物で傷物のハイエルフ奴隷をまとめて超安値で買った奴隷のハーレムで、傷だらけ、半身火傷、片腕、片腕がなかったり等々で趣味が悪いと家臣達も領民も皆呆れているという噂が、帝都を賑わせるようになっていた。
彼の護衛兼監視のために、彼に付けていた正騎士団長の報告書が届いたのは、そうした時期だった。
“突然のことで、自暴自棄にもならず、この程度で満足しているのであれば、まあ、良いか。”と逆に安心もした。“領民の女達を次々と…なんかよりはずっといいではないか?”もちろん、無理矢理にエルフを、なら問題が出るが、彼女らは奴隷である。しかも、エルフの世界で奴隷になった女達である。どこからも、エルフ達からさえ、文句は出ないだろう。
彼女らの処遇も、その他の行動、施策もまあ、問題ないようだ。噂でも猟奇的な、凌辱的な話しは出ていなかった、笑いの対象になる内容だった。ほのぼのとした内容ですらあった。“かえってよかったか。”と心の中で思った。子供の頃から仲が良かった婚約者とも引き離された、婚約破棄させられた、とあらためて不憫に思うと、このことで、かえって心の傷が癒されたようだからと安心してしまった。彼の表情は、色々な感情が交錯していたが、穏やかなものになっていた。“酒池肉林をしているわけではないし、領地経営も、領民への対応も問題はない。領民の信頼も得ているようだ。それに、あのような、馬鹿なことをやっているのであれば、安心するだろう…。まあ、元は美人であるし、魅力的体だろうしな…。それに全員まとめて相手した?あいつは精力絶倫か?実に羨ましい…、いやいや…、誰に弁解しておるのだ、わしは。”彼は報告書を、侍従長に手渡した。
「まあ、問題はないな。これからも、領民の安寧のために励むように伝えるがよい。」
報告書を持ってきた使者に言葉を与えた。
これで終わった…わけではなかった。皇帝のように考えていない者達がいた。
皇太子がその一人だった。それは違うかもしれない。彼の側近達が、信じなかったせいかもしれない。どちらにせよ、皇太子の筋から、一人の聖騎士が、ディオゲネス皇子のもとに派遣された。事実の確認、今後の監視、そして…のために。
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