傷物エルフ奴隷と紡ぐ…幸か凶か

確門潜竜

第1部 傷物ハイエルフ女奴隷安値まとめ買い

第1話 盾になって死ねか…、奴隷だもの。

 「段違いに強いわ!強すぎるわ、こいつ!」

 長い銀髪の顔に目立つ傷跡があるものの、美しい顔と整った容姿の女ハイエルフのパイステアは(片手=義手、片脚=義足だが)、目の前のやはり見事な長い銀髪の魅力的な容姿の美人ハイエルフの聖騎士に対して、心の中で叫んでいた。目の前の相手の実力は片手=義手、片脚=義足のハンディ以前の問題だと思った。剣技も、魔法力も段違い。年齢も、比較的長身の体も変わらないのにだ。ディオゲネス皇子もともに戦っているが、二人がかりでもどうにもならない。皇子の剣技も決してレベルが低いわけではないし、自分だってそうだ、それに二人とも日々努力、鍛錬してきたはずだ、だが、現実はどうにもならなかった。魔法力も、皇子の支援魔法?でアップしてもらっても、相殺防御魔法が加わっても、一方的にダメージを、彼女の攻撃魔法で受けている、自分の攻撃魔法はというと全く効果がないようだった。相手は自分達と戦う時には、彼女の同僚、他のハイエルフ女奴隷騎士達と戦い、倒すまでに、既に散々攻撃魔法を使って、魔法力を消耗していたはずなのにである。

 二人とも、完全に追い詰められていた。もう誰もいない、加勢に入る者はもういない、後ろにいるのは役に立たない、戦闘力以外でもだ、のメイドハイエルフ奴隷姉妹、ただただ現状を理解することすらできずに怯えている、だけだ。

 そして、次の瞬間、聖騎士の必殺の一撃が来ると直感した。その時、主人の言葉を思い出した、ことあるごとに皇子は彼女に言ってきた。

「お前は、私の愛人奴隷、側近奴隷、秘書奴隷、副官奴隷、身辺護衛奴隷、そしてその身を盾として死んで私を守るための奴隷なんだ。そのために、剣を持って添い寝もした。気分、感情は妻であるがな。」

“最後の手段は、僅かな可能性しかないけど、ご主人様が助かるためには私を、身体強化魔法をぎりぎりまでかけて、彼女の前に突き飛ばした時に、一気に飛び出す、文字通り盾代わりにして、彼女の剣が私に突き刺さる時にできる一瞬の隙を狙うことしかないわ!”

 彼と肩を並べて戦いながら、頭の中に浮かんだ。

“さあ!今です、主様!”彼女の心の声が、主人に伝わったのか、彼の手が彼女の背中に触った。突然、“死にたくない!”と思った。“でも、私は奴隷。奴隷の役割を…、この人のおかげで命が、生活が、誇りが…。”諦めようとして、目を閉じた。彼に突き飛ばされた時、“そうよ!”“やっぱり、所詮私は。”と二つの思いが交錯した。が、

「え?」

 突き飛ばされて、痛みを感じたが、床にたたきつけられた結果だと分かった。違う方向に突き飛ばされたのだと分かって、剣のぶつかり合っている音の方向に、慌てて起き上がって視線を向けた。

 主が、エルフ聖騎士と剣を交えていた。一方的に圧倒されている。自分を助けて…、盾になってくれたのだと分かった。そして、剣を何合か交えただけで、彼女の剣が彼の肩を貫いたのが、目に入った。

「何であんたが盾になっているのよ!私が、盾になるんじゃなかったの!」

 涙を溢れさせながら、彼女は叫んだ。

 そして、話は、約2年遡る。

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