第9話 登録完了、そして城下町へ

「これが、君が我が国の国民である証の書類だ。 これに君の親指を当てて欲しい」


「こう……ですか?」


 兵士に呼ばれて、ルカと共に王の間に向かったところ、やはり僕の国民登録の大半の手続きが終わったらしい。

 後は国王様から机の上に提示された書類に僕の親指を当てる事で真の手続きが完了するらしい。


「うわっ!?」


 ひとまず言う通りに親指を書類に当てると、書類が何故か光り輝いた。

 あまりにも眩しい為に、目を瞑ってしまう。

 暫くして光がおさまったので目を開くと、書類があった場所にカードのようなものが置かれていた。


「これで君の国民登録が完了した。 そのカードで、冒険者登録の手続きに使用したり、医療の際の保険証として使えるようになる」


 このカードが正式に国民登録が完了した証らしく、これで冒険者登録の手続きをしたり、医療を受ける際にこれを提示する事で負担を抑えられるらしい。

 何だかマイナンバーカードみたいだなぁ。


「カズくんの国民登録も終わったし、城下町を見て回ろうか。 お父さん、グズーラ王国の制裁の件は任せたよ」


「ああ、任せてくれ。 ルカーディアも彼の事は任せるよ」


「うん。 じゃあ、カズくん行こう」


「あ、し、失礼しました」


 ルカに手を繋がれた状態で、慌てて国王様に挨拶をしてから、王城を出た。

 かなり無礼千万だったような去り際の挨拶の仕方だった気がするけど、大丈夫……だよな?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 王城の正門から出ると、その先には人々が賑わう町並みがあった。


「あの先がショコラ王国の城下町、【ショコラティエ】だよ」


「結構賑やかだね」


「当然だよ。 この国の中心街だからね。 商人やら冒険者やらがたくさんいるよ。 もちろん、他の町や村にも商人や冒険者がいるけどね」


 ルカ曰く、ショコラ王国の城下町は国の中心街でもあるから、たくさんの商人や冒険者達もいるようだ。

 もちろん、ショコラ王国領内の街や村にも商人や冒険者はいるだろうが、人口的にはこの城下町【ショコラティエ】よりは少ないのだろう。


「それで、まずは何処に?」


「色々あるけど、まずは日用品や服を買うからよろず屋に向かうよ」


「よろず屋に?」


「うん。 武器や防具や魔道書以外は、よろず屋で売ってるんだよ。 そこでまず君の服や日用品を買っていくよ」


 ああ、そうか。

 僕はルカと一緒にこのショコラ王国で暮らしていく事になるんだから、服や日用品は必須になるわけだ。

 それをルカのお金で買ってくれるみたいだ。

 何だか申し訳ないが、僕はこの世界については全く知らないし、お金の通貨や相場も知らない。

 これに関しても後で教えてはくれるだろうが……。


「さぁ、よろず屋はこっちだよ」


「わわっ!」


 積極的にルカが僕の腕を組んで、僕を引っ張るかのようによろず屋に向かう。

 出会って間もないのに、彼女が積極的に僕にスキンシップをしてくる事に戸惑いはあるが、今は必需品を買うために向かうという事で割りきっていこう。


「さあ、着いたよ」


 そう思っていたら、規模の大きな建物にたどり着いたようだ。

 この建物がよろず屋なのだろうか?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る