第6話 転移先はショコラ王国

「カズくん、着いたよ。 目を開けていいよ」


「うん……、ここが……?」


「そう。 ショコラ王国内にあるボクの家だよ」


 転移陣からの光による眩しさで目を瞑ってしまったが、ルカが声を掛けたことで目を開けると、小屋の時とは違う豪華な石造りの建物の中にいた。

 どうやらここがルカの住んでいる家らしい。


「あの窓から見える城のようなものは?」


「あそこがショコラ王国の王城だよ。 ボクの家はその後ろにある森の中にあるんだよ」


 今の部屋の窓から見えるのが、ショコラ王国の王城らしい。

 しかもルカの家は王城から見たら後ろにある森の中に建てられているのだとか。


「じゃあ、ここは……?」


「転移陣の転移先として確保しただけの部屋だね。 後は森の中に隠れてるから景色は見えないけど、王城に続く裏口と城下町に続く正規の玄関の二つあるからね。 一休みしたら裏口から王城に行くよ」


「このままの服装で大丈夫なのかな?」


「報告はしているから、父も君に会ってみたいと言ってるしね。 服装はそのままでいいとも言ってるよ。 そして、面会の後で城下町を回るよ」


 今いる場所は転移陣の転移先確保の為に作られた部屋で、基本は森の中に隠れてて今のような景色は見れない。

 とりあえず、一休みしたら王城に入るようだ。

 という事は、ルカの父親は王城で働く貴族なのかと考えて、服装の事が気になりだした。

 今の服装は、異世界に飛ばされる前のブレザーではあるが学生服だから。

 だが、ルカが言うにはこのままでも大丈夫らしい。


「キッチンやリビングなどは一階にあるけど、他は地下にあるからね。 訓練も地下で基本はやってくよ。 じゃあ、ミルクでも飲んでから王城に行こうか」


「わ、分かった……」


 流石に王城に行くという事で緊張してきた。

 ルカと一緒にリビングに行ったあと、ルカがキッチンに向かいミルクを作った。

 彼女の作ったミルクは、程よい冷たさで美味しかった。

 しかし、この家は地下もあるとはなぁ……。


「さて、ミルクも飲んだしトイレを済ませてから王城に向かうよ。 トイレの場所も案内しないとね」


 そう言いながらルカは、まずトイレの場所を案内した。

 この階にもトイレはあるが、地下にもあるので訓練の後にもすぐに行けるらしい。

 僕もルカもトイレを済ませたてから、裏口まで来た。


「裏口用の兵士さんにも話は通ってるからすぐに入れさせてもらえるよ」


「そうあって欲しいけどね」


 そろそろ王城へと向かうわけだが、ルカは裏口用の兵士にも話を通してるからと言うが、そうあってくれたらという不安がよぎる。

 前の世界でも一部の人間はそういう話を耳にせず、自分本位でその者を追い出したという話も周りから聞いているからだ。

 まぁ、その後の顛末はお察しだけどね。


「これはルカーディア様。 その少年が報告にあった少年ですね?」


「うん、そうだよ」


「では、お入りください」


 不安を抱えたまま王城の裏門に来たけど、ルカの言うようにちゃんと兵士にも話が届いていたようだ。

 すんなり通してもらった事で少し安心したが、兵士はルカを『ルカーディア様』って言ってたな?


「ここが、ショコラ王国の王城だよ。 さ、王の間に案内するよ。 はぐれないように手を繋ぐからね」


「え、あ、う、うん」


 王の間に案内するとの事で、はぐれないようにルカが率先して手を繋いできた。

 手を握られて僕は別の意味で心が安定しなかったが、ルカに引っ張られる形で王の間に連れて行かれたのだった。


 いよいよ、ショコラ王国の王様との面会が迫る……。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る