第5話 転移陣

「それじゃあ、出発しようか」


「うん。 でも、隣のショコラ王国はどうやって行くの? 僕は戦う力はないに等しいし」


 翌朝、僕とルカは小屋を出る準備が終わり、いよいよ隣のショコラ王国に向かうのだが、ふと僕はある疑問を感じた。

 僕はルカと違い、戦う力なんて持っていないからだ。

 何せ、『ハズレ』と言われるように僕は低能力かつスキル無しだからだ。


「それに関しては大丈夫だよ。 小屋を出てショコラ王国方面に向かってすぐにもう一つの小屋があるから。 そこにある転移陣を使うよ」


「転移陣……?」


「特定の場所に一瞬で転移できる魔法陣だね。 使用には魔力が必要だから安易には使えないけど、今回の為に利用するものは利用するよ」


 ルカは僕の疑問にこう答えた。

 あまり多用はできないらしいが、転移陣と言う特定の場所に転移できる魔法陣を使ってショコラ王国に向かうらしい。


「なお、ここからだと徒歩でも二週間は掛かるし、馬車でも一週間は掛かるね。 魔物や盗賊と出会ったらさらにロスになるしね」


「遠いなぁ……」


 なお今いる小屋からショコラ王国には徒歩でも二週間、途中から馬車を使っても一週間は掛かるらしい。

 トイレ事情とか気になるけど、それだけこの世界は交通インフラは良くないようだ。

 魔物や盗賊とかも出くわしやすいみたいだし……。


「転移陣にはボクの家に繋がってるから、そこに着いたら魔法などの訓練をやろうと思うんだ」


「魔法の訓練?」


「うん。 スキル無しって言ったけど、逆に言えば好きなように魔法や技を覚えられるんじゃないかってね。 向こうに着いたらゆっくりしつつ訓練していこう」


「そうだね。 ここで生きていくならそれくらいは必要だろうし……」


「うん、じゃあ出発しよう!」


 当初の疑問はひとまず晴れたことだし、僕はルカと一緒に転移陣がある小屋へ向かった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ここが転移陣のある小屋?」


「うん。 ここの転移陣がショコラ王国にあるボクの家と繋いでるんだよ。 グズーラ王国の動向を見張るために時々これを使って見張り小屋で見張ってたんだけどね。 さ、入るよ」


 見張り小屋よりもさらにこじんまりとした小屋の中に転移陣と言うものがあるようだ。

 ルカが扉を開けて中に入るように促すので、それに従うように中に入る。

 中に入るとすぐに地下への階段があり、その先に転移陣がある部屋があるようだ。


「さ、着いた。 これが転移陣だよ」


「これでショコラ王国に向かうんだね?」


「そう。 しっかり捕まっててね。 魔力を注いで転移陣を起動するから」


「えっと、こんな感じで?」


「そうそう、それでいいよ。 はぐれないようにする事が優先だからね。 じゃあ、魔力を注ぐよ」


 僕はルカの腰に手を回す形でくっつく。

 これでいいのかと思ったが、ルカがそれでいいと言ったのでその状態のままにしておく。

 ルカは両手から魔力を出して、そのまま転移陣に向けて放った。

 すると転移陣が光り輝き、そのままルカと共にその光に包まれたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る