第4話 魔女の名前はルカーディア
「えっと、すみません……」
「いいよいいよ。 気にしないで。 それにしても、結構感情溜め込んでたんだね」
「前の世界で母親から泣くことを禁じられたから」
「うわぁ……。 酷い母親が君の世界にもいたんだね」
ひとしきり泣き切った僕は、魔女の女の子から顔を離した。
柔らかい胸を体感できない事に名残惜しい感じがするが、流石に自重はしたい。
「まぁ、こうなったわけだし、折角だからボクと一緒に暮らさない?」
「いいんですか?」
僕がある程度落ち着いたのを見計らって、魔女の女の子は自分と一緒に暮らさないかと提案してきた。
突然の提案に僕は、目を見開きながら彼女に確認を取る。
「君の今の状況じゃ、居場所が無いのと同じだしね。 そんな君をボクは放ってはおけないんだよ。 この小屋は見張り小屋みたいなものだから、隣のショコラ王国に一緒に行く事になるけどね」
「隣の国に……ですか?」
「うん。 後でボクの父にも伝えておくけど、そこでショコラ王国の国民として色々出来るようにして貰えるよ」
この小屋は見張り小屋的なものらしく、狭い感じなので、魔女の女の子は隣のショコラ王国で暮らすことを勧めた。
そこの国民になるように彼女は働きかけてくれるのだそうだ。
(ここまで来ると……この人は貴族か何かかな?)
「分かりました。 僕はその提案を受け入れます」
心の中で彼女がどこかの貴族ではないのかと考えながら、僕は彼女の提案を受け入れた。
「うん。 じゃあ、まず君の身体を完治させないとね。 回復魔法と薬のコンビネーションで治せるレベルにまで落ち着いたし後はこの薬を塗るだけで傷も痣も消えるから」
まず僕の身体を完治させることを優先する魔女の女の子。
どうやら持って来ていた薬を塗れば完治できるところまで治療してくれたようだ。
「あ、名前名乗ってなかったね。 ボクはルカーディア。 君は?」
「えっと……、
「カズマサ……、じゃあカズくんって呼ぶね。 これからもよろしくね」
「よろしく、えーっと……」
「ボクの名前、多分呼びにくいだろうから『ルカ』でいいよ。 そっちの方が呼びやすいでしょ。 後、ボクと君って同い年っぽいし、敬語はいらないからね」
「う、うん。 よろしく、ルカ」
「よろしくねっ! じゃあ、お薬塗るから包帯を取るね」
魔女の女の子改め、ルカーディアこと『ルカ』は、そう言いながら包帯を取り、薬を塗った。
結構傷に響いたが、すぐにその傷は消えてなくなり、痣も完全になくなった。
異世界の薬って、状態次第ではすごい効果になりそうだな。
重体だとあまり意味がなさそうだけど。
「今日はゆっくり休んで明日出発しよう! その間、ボクは報告をするから明日以降にはスムーズに出発できると思うからね」
「うん、分かった」
出発の予定も明日になったので、今日はここで一晩明かすことにした。
新しい生活に向けて、明日から隣の国……ショコラ王国へ向かうのだから、今は休ませてもらおうかな。
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