第1部 半年前の話

第1話 異世界に飛ばされた挙句、ハズレ扱いに

 半年前。

 僕こと木崎きさき 和正かずまさは、実際にはあまり友達がいない『陰キャ』だった。

 朝のホームルームが始まる瞬間に、突如足元に光が発生し、そのまま飲み込まれた。


 意識を取り戻した場所は、学校とは違いまるでファンタジーのお城のような建造物だった。

 僕だけでなく、クラスメイトもみんな戸惑っていた。


「ようこそ、異世界の勇者たちよ」


 突如上から目線の声と共に見た感じの国王が現れる。

 隣には王女様っぽいのがいたり、周囲には兵士がごまんといた。


「私はそなたたちをこの世界に召喚した国の国王、グズダフ・グズーラである。 隣は娘のサロメ・グズーラである」


「おい、ここは何処なんだよ!!」


「私達を元の世界に帰してよ!!」


 僕を含めた多数のクラスメイトは国王に怒りを向ける。

 そりゃそうだ。

 突然、この世界に転移されて勇者にされるなんて納得がいかないだろうし。

 僕は家族と呼べる者はいないが、他のクラスメイトは家族がいるだろうしね。


「否。 そなた達には魔王を倒してもらうためにこの世界に召喚したのだ。 それを成すまで元の世界には帰すことは出来ぬ」


「そ、そんな……」


 国王によって僕達が勇者として魔王を倒す為に召喚したので、僕らが魔王を倒さない限り元の世界には帰すことは不可能と言った。

 それを聞いた多数のクラスメイトはショックを受けてへたり込んだ。


「さて、さっそく能力を測定しようではないか。 サロメ、あれを」


「はい」


 そう言いながら国王は、サロメと言う王女にある物を持ってくるように頼んだ。

 少ししてサロメと言う王女は水晶玉みたいなものを持ってきた。


「この水晶玉で、そなたたちの能力を測定させてもらう」


 国王がそう言うと、へたり込んだクラスメイトを兵士が立たせて能力を測定させていく。

 順番に次々とクラスメイトや先生の能力を測定していく。

 一部はノリノリの様子だが、大半は乗り気ではないようだ。


「次!」


 そして僕の番がやってきてしまった7。

 恐る恐る水晶玉に触れる。

 すると……。


「何と、スキル無しの低能力じゃと!? まさかこんなゴミが混ざっていたとは!! 兵士たちよ! こやつを『魔女の森』の奥に放り込め!!」


「ははっ!!」


「ちょっと!? どういう……ぐあっ!!」


「木崎くん!!?」


「いやあぁぁぁぁ!!」


「おい、木崎に何をするつもりだ!!」


 国王の指示に訳の分からないまま、僕は兵士に後頭部を殴られた。

 悲鳴を上げる女子生徒と僕への行為に非難する男子生徒の声を聴きながら、僕の意識はそこで途絶えたのだった……。


 まさか、僕がハズレ扱いにされるなんて、どこの世界にも理不尽なんてものはあるんだなぁ……。


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