最終話 さよなら(10/15)

       火竜の前、海を背に身構える啓吾。


       火竜、立ち上がり体勢を整える。

       ちらっと武装天人を見、再び啓吾を見る。


火竜   :「どうする、ドモンケーゴ。得物はないぞ!」

       牙を剥き、口を広げる。


       啓吾、肩で息をする。


       2名の武装天人、弓に矢をつがえてきりきりと弦を引き絞る。


       火竜、右目で武装天人の動きを見る。

       コンテナの前で、じりじりと画面右方へ動く。


       2名の武装天人、火竜を狙い切れず、戸惑った様に弓を下ろす。


       啓吾、海の前。火竜の動きに合わせて、じりじりと画面左方に動く。


       火竜、牙を剥く。


火竜   :「シャアアアア!」


       獅子王、腰から鞘ごと剣を抜く。投げるのかと見えて躊躇する。

       翔、獅子王の剣の柄(つか)を掴んで、鞘から抜く。


獅子王  :「おいっ!?」


       翔、走り出し助走をつけ、獅子王の剣を両手で投げる。


翔    :「啓吾ーっ!」

       しりもちをつく。


       獅子王の剣が夜空を飛ぶ。


       啓吾の左手が剣の柄を受け止める。

       その瞬間、啓吾の体を電撃が走る。


啓吾   :「うわっ!?」

       驚いて剣を取り落とす。


       剣が啓吾の足元に落ちる。


       火竜。啓吾の様子を窺う。


       啓吾、足元に落ちた剣を取る。両手で構えようとして、再び身体を電撃が襲う。


啓吾   :「うっ!」


       火竜、笑うように口を歪める。


火竜   :「バカめ。地上人に武装天人の剣が使えるものか!」


       啓吾、かろうじて斜め下段に剣を構える。腕を電撃が走る。苦痛に顔を歪める。


啓吾   :「くっ!」


       火竜、腰を落として力を溜め、左爪を振り上げ、牙を剥く。


火竜   :「ふぅぅぅ!」


       啓吾、目を細めて火竜を見る。



*シーン10-2* 幻影


       彩香が振り向く。


彩香   :「啓吾さん!」



*シーン10-3* 埠頭


       啓吾、咆哮する。


啓吾   :「うおおおおおおっ!」

       両手で剣を頭上に振り上げる。


       啓吾、上段に構える。


       武装天人と翔たち。


翔    :「啓吾の上段だ!」


       翔、アップ。


翔    :「大学最後の試合以来だ」


       火竜、目を細める。

       咆哮する。


火竜   :「『天の位(くらい)』だと! 生意気なーっ!」

       突進する。角がスパークを放つ。


       啓吾、上段に構えて立つ。体を電撃が走り、輝点が浮かび『九耀』の文様を形作る。輝点が吸い寄せられるように剣に集まり、剣が白く光を放つ。先端に雷光が走る。

       突進する火竜、後ろ姿。その先に啓吾、上段に構えて身じろぎもせず。

       火竜の角が啓吾を突くと見える。


       啓吾の剣、夜空に振り上げた刀身が電光を放ってひらめく。


啓吾   :「えいっ!」

       画面、下にチルト。

       啓吾が垂直に剣を振り下ろす。

       火竜の体が真っ二つになる。

       火竜の体がスパークを放つ。スパークが次第に強くなる。

       火竜の体が白色に輝き、辺りに四散して消える。


       埠頭に立つ啓吾。剣を振り下ろした姿勢。雷光が消える。

       静寂。波の音。


       波が埠頭の岸壁を洗う。


       翔、アップ。


翔    :「やった!」


       翔、優香が走り出す。


翔    :「やったー! 啓吾ー!」


       啓吾の足元に剣が落ちる。ガラン、と重い音。

       啓吾、右腕をおさえてうずくまる。


啓吾   :「ううっ!」


       倒れ込む啓吾を、駆け寄った翔と優香が脇から支える。


翔    :「啓吾っ!」

優香   :「啓吾君!」


       啓吾、その場にうずくまる。

       表情、アップ。激痛に顔を歪める。


       獅子王、歩いて来る。片手で剣を拾い上げる。

       剣の状態を確かめる。刀身を左の手の平にパンパンと叩き当て、柄を目先に上げてしげしげと眺める。

       ふいに前に振り下ろす。


       うずくまる啓吾。その前に立ち、啓吾に剣先を向ける獅子王。


       獅子王、アップ。啓吾を見下ろして、


獅子王  :「(平静な口調)腕を傷めたか? やはり、地上人には無理があったな」


       うずくまる啓吾。目の前に突きつけられた剣先を悔しげに見つめる。


       獅子王、剣を鞘に納める。


獅子王  :「気の毒だが、二度と剣は握れまい」

       身を翻す。


       啓吾、翔と優香に支えられてうずくまり続ける。

       獅子王、去って行く。

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