最終話 さよなら(9/15)

■シーン10■ 青海(あおみ)埠頭

*シーン10-1* 埠頭


       夜闇の中を、黒い異形の影が走る。


       火竜(片目、片腕)が右脇腹をかばう様に走る。左翼は破れ、左脇腹にワイヤーが垂れている。


火竜   :「抜かった! 帝釈天の『九耀』はああも強力なのか!」


       夜空を舞う人影。


       啓吾、コンテナを飛び越えて着地する。右手に木刀。背景は海。

       焦点移動、火竜が立ち止まる。


       火竜、アップ。


火竜   :「ドモンケーゴ!」


       啓吾、落としていた腰を上げると、木刀を青眼に構える。


啓吾   :「貴様は俺が逃さん!」

       突進する。

       木刀を八双に変化させる。


       埠頭を走る啓吾と火竜。火竜が左爪を振り上げる。

       啓吾の木刀が上段に変化する。


       夜空に、木刀と火竜の爪が激突する。

       啓吾と火竜、木刀と左爪を交え、両者離れる。


火竜   :「ガアアッ!」

       左爪を振り上げ突いて来る。


       啓吾、木刀を横に払い、内側から火竜の左手首を打ち、返す刀で横面を打とうとする。

       火竜、頭を右に振ってかわす。

       啓吾、右足を上げて、火竜の腹を蹴り飛ばす。

       火竜、よろけて下がる。


火竜   :「グエ!」


       啓吾、木刀を振り下ろす。


啓吾   : 左上段から、「めんっ!」

       右上段から、「めんっ!」


       火竜、左爪で木刀を弾き返し、尾を横殴りに振る。

       啓吾、火竜の尾を飛び越える。

       火竜、尾を振り戻す。

       啓吾、身を屈めて尾をかわすと、低い位置から木刀を正面に突き出す。


啓吾   :「でゃっ!」


       火竜、胸元アップ。木刀の先端が喉輪を突く。


火竜   :「ゲッ!」

       ズームアウト。よろめいて、後ずさる。


       啓吾、木刀を横一線に走らせる。


啓吾   :「どおーっ!」


       火竜、羽ばたいて舞い上がる。

       落下しながら左爪を啓吾の頭に振り下ろす。

       啓吾、木刀を頭上にかざして火竜の爪を受け止める。

       火竜、着地するや頭を落とし、鼻先の角で啓吾の腹を突く。

       角がスパークを放つ。


啓吾   :「うわっ!」

       後ろにのけぞる。


       啓吾の木刀が夜空を飛ぶ。


       啓吾、倒れて係留ビットに背中を打ちつける。


啓吾   :「うっ!」

       苦痛の表情を浮かべる。


       木刀が海面に落ちる。ポチャンと水音。


       啓吾、ぐったりする。


       火竜、腰を上げ、啓吾の前に歩み出る。

       火竜、啓吾の表情を窺う。首を引き、牙を剥いて口を開く。


火竜   :「シャアアア!」


       コンテナの向こうから走る人影。


翔の声  :「啓吾ー!」


       火竜、人声の方に首を向ける。

       未練らしく再び啓吾を見るも、海に向かって走り出す。


       火竜、海に身を躍らせる。


       啓吾、はっと目を開く。


       火竜の尾を人間の手が掴む。

       ズームアウト。埠頭に立つ啓吾が火竜の尾を掴んでハンマー投げにする。


啓吾   :「だやあああっ!」


       火竜、埠頭に投げ出される。


       コンテナの方から、2名の武装天人と翔、優香が駈けて来る。


翔    :「啓吾ー!」


       啓吾。背景は海。


啓吾   :「来るなーっ!」


       立ち止まる武装天人と翔たち。


       海を背に素手で身構える啓吾。


       身を起こす火竜。啓吾を睨む。


       獅子王とさらに1名の武装天人が、駆けつける。


獅子王  :「(叱責)何をしている!?」

武装天人 :「はっ。いや‥‥」

獅子王  : 啓吾を見て、

      「あの男、また余計な事を!」

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