最終話 さよなら(5/15)

■シーン7■ レインボーブリッジ


       夜。レインボーブリッジ俯瞰。

       背景は芝浦の明かり、パンしてお台場の明かり。


       橋の上に啓吾、端まで歩き手すりに手をつく。

       汽笛の音。

       啓吾、横顔。風が髪をなびかす。かなたに有明総合病院の明かり。


啓吾   :「火竜の狙いは彩香じゃない。俺だ。ここならば自衛隊もすぐ動けるし、彩香に危害がおよぶ事もないだろう」


       啓吾、手すりを離れて橋の中央へ。背景は夜の海。

       立ち止まる。鼻をひくつかせる。


啓吾   :「オゾン臭?」

       振り返る。


       橋の隅に火竜。立ち上がる。


火竜   :「一人で現れるとはいい度胸だな、ドモンケーゴ!」


       啓吾、火竜を打ち眺める。。


       火竜、笑うように口を動かす。


火竜   :「俺をおびき出したつもりか知れんが、俺も、お前が一人になるのを待っていたのだ」


       啓吾、火竜を見つめ親しげに笑う。


啓吾   :「ほおう。お前さんも今夜は一人か? なるほど、その方が目立たないもんなあ? でも、やっぱり、罠にかかったのはそちらみたいだぜ」


       ズームアウト、啓吾全身。

       腰に下げていた二連装の水中銃を打つ。


       火竜の右脇に銛が突き刺さる。


火竜   :「ギャッ!」

       ズームアウト。飛び上がろうとする。

       銛に結ばれたワイヤーが火竜を橋梁に叩きつける。


       銃声。更にもう一本の銛が火竜の左翼を刺し貫く。

       銛が橋梁の欄干に絡み付く。


       火竜、橋の上に倒れる。


       啓吾、銃を構えて立つ。銃口から煙が上がっている。

       啓吾、落としていた腰を伸ばす。


       火竜、身を起こしうづくまって啓吾を見る。


       啓吾、左手は銃を構えたまま、右手を腰に回す。済まなげな笑みを浮かべて、


啓吾   :「もっとも、俺も、お前とのお遊びは飽きちまってよぉ。悪いな。今、自衛隊を呼んでやるよ。待ってな」


       啓吾、ジーンズのポケットから彩香のPHSを取り出す。

       電話を掛けようとして、ふっと、周囲に視線を送る。


       火竜、笑うように口を歪める。


       啓吾、周囲を見回す。50センチ程の無数の小型火竜が啓吾を取り囲んでいる。

       啓吾、額に汗が浮かぶ。右手のPHSをジーンズに戻す。

       一匹の火竜が飛び掛かる。


小型火竜 :「ギャー!」


       啓吾、左手の銃を横に振り火竜を叩きのめす。

       別の火竜が飛び掛かる。

       啓吾、右手を背中に回してキスリングから木刀を引き抜き、小型火竜の脳天に打ち下ろす。


小型火竜 :「ギャッ!」


       小型火竜、路面に叩きつけられる。

       啓吾が蹴り飛ばす。

       更に別の小型火竜が正面から飛び掛かる。続いて左から。

       啓吾、右手の木刀で正面からの火竜の顔面を打突し、左からの火竜を銃で横殴りにし、そのまま、振り返って後ろから来た奴を木刀で打ち払う。


       火竜大、いらだたしげに右目を動かす。


       啓吾、左足に噛み付いた火竜を銃で払い、その横にいた火竜を左足で踏み付け、後方から首を狙って来た奴を木刀で打ち払う。左から来た火竜が啓吾の左腕に咬みつく。啓吾、木刀の尻で殴りつけて払う。そのまま、木刀を右に払って、右から来た火竜を打ちのめす。右足元の火竜を蹴り飛ばし、返す勢いで右背後の火竜もかかとで蹴り飛ばす。

       一斉に火竜が下がる。


       火竜大を中心に、無数の小型火竜、啓吾を遠巻きにする。


       啓吾、左手で持っていた銃を脇に投げる。背中に手を回してもう一本の木刀を引き抜く。


啓吾   :「分かったよ! 遊んでやる」


       啓吾、左の木刀を中段に突き出し、右の木刀を上段に上げて構える。


啓吾   :「(叫ぶ)雑魚を引っ込めろ!」


       火竜大。右目が光る。

       無数の小型火竜が火竜大の体に集まる。火竜大の体が見る見るうちに大きくなる。


       啓吾、正面からの俯瞰。愕然として目を見開く。トラックアウト。足元の橋梁が崩れる。

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