第8話 天上への光(12/13)
*シーン7ー2* マンション、玄関前の通路
マンションの廊下に風花と優香、翔。
優香 :「じゃあ、今日は色々とありがとう。本当に気をつけて帰ってね」
風花 :「ええ。優香さん達も遊びにいらして下さい。啓吾さんにも、彩香を見舞って下さる様に伝えて下さる? わたし、ずいぶんとひどい事を言っちゃったから」
優香 : うなずく。
「伝えとくわ」
優香と風花。翔から少し離れて。
優香 :「(小声で)ああ、そうだ。さっきの話なんだけど、ほかの人には黙っててくれる? わたしが天上人の娘だって事」
風花 : 少し驚いた風で優香を見て、
「どうしてですか? そういう出自で証拠の『九耀』もあるのでしたら、天上界で暮らす事だって出来るのに」
優香 :「わたしは、地上で生まれ育って、地上の暮らしを満喫してるわ。天上界なんて興味ない。それにほら、」
ちらっと後ろに首を振ってみせて、
「わたしには、面倒みなくちゃなんない厄介なのが一匹いるから」
風花 : ちらっと背後を見て、軽く肩をすくめて、可笑しそうな笑みを浮かべてうなずく。
「分かりました。優香さんの事は、わたしの胸一つに留めておきます。その代わり、」
優香 :「ん?」
風花 :「一度、優香さんの『九耀の腕輪』を見せて下さい」
優香 : ちょっと首を傾げて、
「分かったわ。今度、取り寄せておく」
肩をすくめて、
「あーあ、5年振りだわ、こちらから母に連絡するのって」
風花、優香を見てくすっと笑う。体が一瞬光に包まれる。
肩衣の下から翼が広がり、肩につけた羽衣も足元まで伸びる。
風花、朝焼けの空を飛び去って行く。
風花を見送る優香。翔が肩に腕を回す。
翔 :「よー、よー。あの天女さんと、何ひそひそ話してたんだよ?」
優香 :「んー?」
しばらく考えて、急に吹き出す。
「ふふ。笑っちゃう。あの人ったら、彩香ちゃんの結婚の心配してるんだもん」
翔 :「(興味が湧いた様子で)へー?」
優香 :「だから、言ってやったのよ。それなら、いい人がいるわよって」
翔 :「そりゃまた、思い切り早手回しな話だな」
優香の肩を抱き寄せて、
「俺は、まだ一波乱も二波乱もあると思うぜ」
優香 : 翔を見て、
「そりゃ、なくっちゃ!」
翔 : 優香に額を寄せて、
「面白くない、か?」
優香 :「じゃぁない?」
■シーン8■ 有明
トヨタ・イプサム(第6話で登場)、後部座席からの情景。運転席に翔。助手席に優香。
啓吾 :「(後部座席から)検問みたいだな」
2人の自衛官がイプサムを停止させる。
翔と優香が窓から顔を出す。
翔 :「なんですー?」
自衛官1 :「この先は通行止めだ。立ち入り禁止区域だ」
翔 :「なんで?」
自衛官1 :「理由は、いい」
啓吾 : 後部座席の窓から顔を出して、
「この先の有明総合病院に友人の見舞いに行くんです。通してもらえませんか?」
優香 :「わたしの家族なんです」
自衛官1 :「あの病院の入院患者は全てよそへ移して、今はいないはずだ。帰りなさい」
優香 :「そんな事聞いてませーん」
二人の自衛官、不審げに顔を見合わせる。
啓吾、車を降りる。翔と優香もそれに続く。
啓吾 :「そうしたら、病院に照会してもらえませんか。第一外科の朝倉先生に」
自衛官1 :「君の名前は?」
啓吾 :「土門啓吾といいます。世田谷区在住」
運転免許証を出す。
自衛官、啓吾の運転免許証を見て、
自衛官1 :「(驚いた様子で)お前が土門啓吾か!」
自衛官2 :「あんたには、警察から出頭命令が出ているはずだ」
翔と優香、驚き顔、啓吾をかばう様に立って、
翔 :「啓吾が何したってんだよ!?」
優香 :「そうよ、そうよ」
自衛官1 :「この男は、災害に関わる重大な情報を故意に隠匿した疑いがある、という事だ。それ以上は知らん」
翔 :「そんなのってあるかよ!」
優香 :「そうよ! 啓吾君がいなかったら、東京はとっくに火竜の熱擾乱よ!」
啓吾 :「(咎めるように)優香ちゃん!」
翔 :「そうだ! 啓吾を捕まえるってんなら警官隊の百人も連れて来いってんだ!」
啓吾 :「おぅい、翔!」
翔の襟首を掴んで引き戻す。
翔 : 襟首をつかまれて、
「いてて! いてえよ、啓吾!」
啓吾 : 翔を脇に下ろす。
「(自衛官らに向かって)分かりました。警察には然るべく出頭します。ただ、それは警察の仕事なんですよね? 俺達は、今はあの子の容体を見舞ってやりたいだけなんです。特別に、通して頂けませんか。お願いします」
優香 : うなずいてみせる。
自衛官ら、顔を見合わす。
啓吾 : 頭を深く下げる。
「お願いします!」
優香 :「(啓吾に倣って)お願いします」
自衛官1 : あごをしゃくって、
「おい」
自衛官2 : メモとペン、それとカメラを執って、
「こちらに記帳をして、何か身元を証明出来るもの‥‥、その免許証でいいから、貸しなさい」
獅子王(声のみ):「通す必要は、ありませんな!」
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