第7話 対決の夜(7/12)

■シーン8■ 朝、優香のマンション

*シーン8-1* マンション前路上


       スズメの声。

       マンション前に小型車(三菱ミニカ・トッポ)が止まっている(レンタカー)。



*シーン8-2* 玄関口


       玄関を開ける啓吾、迎える優香。


啓吾   :「おはよう。彩香は?」

優香   :「(気遣わしげな表情)まだ部屋なの。下で少し待っててくれる?」

啓吾   :「(しばし考え)分かった」



*シーン8-3* 彩香の部屋、


優香   :「(ノックして)彩香ちゃーん」

       ドアを開けて中に入る。


       ベッドに座った彩香、振り返る。

       彩香の服装、グレーのストラップTシャツにプリント地スカート。ただし、髪は寝起きのまま。ベッドに黒いサマーカーディガン。


優香   :「(笑顔で)どうしたの?」

彩香   : 優香を見て、目を伏せる。

      「あたし‥‥、行かない。この間、あんなひどい事言ったのに‥‥」

優香   : 笑いながら、

      「だから、謝るんでしょう?」


       優香、彩香を鏡の前に座らせる。


優香   :「ほら! グズグズしてる子は、部屋から追い出すわよ!」

       ブラシを取って、彩香の髪を梳かす。

       ふと、彩香の顔に頬を寄せる。

      「似ているね? 彩香ちゃんとわたしって」


       鏡の中の彩香と優香。


彩香   :「(不思議げに、心中で)本当だ。目鼻立ちがそっくり‥‥?」


優香   : 彩香の髪にリボンを留めるると、肩を叩いて、

      「さっ! 啓吾君が待ってるわよ!」



*シーン8-4* マンション前


       優香、玄関口で周囲を警戒する。

       彩香はつば広の帽子を目深にかぶっている。

       優香、彩香の顔を帽子で隠す様に、車まで連れて行く。

       運転席に啓吾。


優香   :「じゃあ、よろしくね」

啓吾   : 声は立てずに、手だけ上げて車を発進させる。


       走るトッポの助手席に彩香。


彩香   :「(気遣わしげに)どこに行くんですか?」

啓吾   :「ん? 空が見たいんだろう? 連れてってやる」

彩香   : 不得要領な顔。

啓吾   : ちらっと彩香を見て、前を向いて、

      「愚痴でも文句でも言っていいぞ。聞いてやる!」

       再び彩香を見る。

      「決めたんだ。彩香からは離れない」

彩香   : 不安げに、

      「どうして‥‥、あたしにそんなに良くして下さるんですか?」

啓吾   :「ん? また理由か? そうだなあ‥‥」

       しばし運転を続ける。

      「彩香が愛おしいからだ」

彩香   : 驚いた顔。怒った様子で啓吾を見て、

      「(強い口調で)からかっているんですか?」

啓吾   : 彩香を見て、

      「からかっちゃいない」

       前を見る。

      「こんな、地上の世界で迷子になって、それでまだ、バカみたいに天女の責任感を引きずっている彩香が、愛おしいからだ」


       彩香、しばし啓吾を見つめる。

       戸惑ったように目を泳がせる。

       目を逸らし、窓ガラスに額をもたれさせる。


彩香   :「(小さく)‥‥だよ‥‥」

啓吾   : 彩香をちらっと見て、

      「ん? 何?」

       前を確認して、もう一度彩香を見て、

      「ごめん。聞こえなかった」

彩香   : 啓吾を睨みつける。

      「『バカ』だけ余計です!」


       啓吾、驚いて彩香を見る。

       彩香、睨んだ表情で微笑む。

       啓吾、前を見る。もう一度、笑みを浮かべて彩香を見る。すぐに前を見る。

       彩香、まぶしげに啓吾を見つめ続ける。

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