第7話 対決の夜(6/12)

*シーン7-2* 啓吾の席


       事業所室内。所員達、日常業務につき忙しく立ち働く。


       啓吾の机の前に、啓吾と翔。

       椅子を寄せて、書類を手に、


翔    : 「待った! 分かった!」

啓吾   : 「分かった? 本当に?」

翔    : 「ああ。今日だけで覚え切れないって事だけ判った」


       啓吾、軽く天井を見上げる。


       社内電話のベルが鳴る。啓吾、受話器を取る。


啓吾   : 「はい。土門です」



*シーン7-3* 日山食品本社1階ロビー


       茉莉。ロビーから携帯電話。


茉莉   : 「私よ」



*シーン7-4* 日山食品東京第二事業所


       啓吾、横顔アップ。無言。



*シーン7-5* 日山食品本社1階ロビー


茉莉   : 「啓吾の『責任感』とやらも大したものじゃないわね」



*シーン7-6* 日山食品東京第二事業所


啓吾   : 「(無言。しばらくして、)ごめん」



*シーン7-7* 日山食品本社1階ロビー


茉莉   : 「まあ、いいわ。吉田君なら知らない仲でもないし、啓吾の替わりなんていくらでもいるものね!」



*シーン7-8* 日山食品東京第二事業所


啓吾   : 「ごめん」

       ぶつんと電話の切れる音。

       受話器を戻す。

       机に肘をつく。汗を拭く様に両手の平で顔をこする。しばらく、そのまま。

       ふいに背中をど突かれる。

       振り向く。

       いつの間にか、翔が啓吾の後ろに立っている。


翔    : 「よう! おめでとう!」

啓吾   : 「何だよ!?」

翔    : 「これが啓吾にとって一番のハッピーエンドだよ」

       顔を脇に向けて、

      「レイちゃん、お茶ー!」

       歩き出す。


       給湯室前で翔とレイ、遠景。


レイ   : 「吉田さん! お茶はそれぞれ自分で入れるんですよ!」

翔    : 「いいじゃん、たまに! それじゃさ、一杯、俺に付き合ってよ」

レイ   : 「わたしだって忙しいんですよぉ」


       啓吾、翔を眺めながら苦笑する。


啓吾   : 「ふん。世話焼きはどっちだよ?」


       啓吾、椅子の向きを変えてパソコンに向かう。



*シーン7-9* 回想1


       大学生の啓吾と翔。廊下を歩く。翔が啓吾を追いかける様に。


翔    : 「マザコン! お前の場合は、茉莉みたいな女を忘れられないのがそれなの!」



*シーン7-10* 回想2


       大学生の啓吾と翔。校舎の階段を降りる。やはり、翔が啓吾を追いかける様に。


翔    : 「いいじゃんかよ! 紹介してんだから会えよ! 付き合うかどうかは、それから決めりゃいいだろう!」

啓吾   : 「今、そういう気分じゃないんだ」



*シーン7-11* 回想3


       翔、武道館の観客席で。


翔    : 「(観客席から身を乗り出して)よし、行けー! やれー、啓吾!」


       防具をつけた啓吾、竹刀をスルスルと上げて上段に構える。

       駆け違う2人の剣士。啓吾、打ち込み面を決める。


審判   : 「面あり、一本!」


       会場が湧く。

       翔。大歓声の中、笑顔で駆けて来る。


翔    : 「啓吾ー!」



*シーン7-12* 日山食品東京第2事業所


       啓吾、パソコンに向かい、文章を打ち込み続ける。

       難しい顔で手を止めて頭を掻く。



第7話(後編)に続く(11月13日公開)

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