第7話 対決の夜(5/12)

■シーン7■ 日山食品東京第2事業所

*シーン7-1* 事務所


       朝。出勤して来る所員達。


所員1  : 「おはようっす」

所員2  : 「おー」


       立ち話をする所員。


所員2  : 「あれは、まだ捕まらないなあ」

所員1  : 「ここも遠くはないっすからねー」


       啓吾が前を歩いて通る。


所員1  : 「おー、土門。今日はこっち?」


       啓吾、真直ぐに山田所長の机に行き、白い封筒を差し出す。

       封筒、表に「辞表」の文字。

       山田所長、封筒を見、啓吾を見る。

       啓吾、封筒を机に置いて頭を下げる。


啓吾   : 「済みません!」


       所長席俯瞰。周囲で所員が遠巻きに見る。


       頭を下げ続ける啓吾。

       山田所長、封筒を手に取り、しばし見つめる。

       手を下ろし、啓吾を見る。

       啓吾、頭を上げる。


山田   : 「例の、バイトの女の子か? 怪我はなかったと聞いたが、良くないのか?」

啓吾   : 「心に傷を負っています。あいつには身寄りがありません。ついていてやりたいんです」


       山田所長、再び封筒を手に取って席を離れる。


       山田所長。窓辺にたたずみ、しばらく、外を眺める。

       啓吾に振り返る。


山田   : 「まあ、若い頃は色々やってみる事だ。好きにするんだな」


       啓吾、再び頭を下げる。


山田   : 「ただし、これは受け取れないな」

       封筒を机に投げて寄越す。


       啓吾、怪訝な顔で頭を上げる。


山田   : 「お前はうちの戦力だ! そう簡単に辞められても困る」


       啓吾、口を開きかける。


山田   :  ニヤッと笑い、

      「休出もずいぶん貯まっているんだろう? 10日程休みを取れ」


       啓吾、言葉を出しかける。


山田   :  厳しい顔で、

      「一つだけ言っておくぞ。チャンスってのは、そう滅多に来るもんじゃあない」


       啓吾、緊張して口を閉じる。


山田   :  表情を和らげて、

      「『出会い』も、だ。無駄にするな」


       啓吾、驚いた顔。

       再び頭を下げる。


       山田所長、啓吾の脇に戻って来ると、啓吾の後頭部に手を置いて、


山田   : 「おおい! 吉田!」

翔    : 「はあい!」

山田   : 「お前、今すぐに土門の業務を引き継げ! 今日中に全部の引き継ぎを終わらせろ!」

翔    : 「(心底うんざりという様子で)ええー? 勘弁して下さいよー!」


       山田所長、席を離れる。

       啓吾、頭を下げ続ける。

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