第7話 対決の夜(2/12)

■シーン3■ 事業所屋上


       啓吾、屋上の手すりにもたれて遠くを見る。

       右手に包帯をしている。

       風が髪をなぶる。

       街のざわめき。

       画面、右にパン。出入り口の鉄扉が開いて、茉莉が歩いて来る。


茉莉   :  歩きながら、

      「怪我をしたそうね?」


       振り返る啓吾。

       振り返る啓吾と、歩いて来る茉莉。剣道の立ち会いの様な情景。

       茉莉、腕を胸で組み、立ち止まる。

       二人、向き合って見詰め合う。

       やがて、啓吾から先に目を逸らす。


啓吾   :  目を逸らして苦笑。包帯をした右手を軽く振って見せる。

      「かすり傷だ」


       茉莉、腕組み。啓吾を見つめて、


茉莉    「あなたって人がよく分からないわ。はっきり言って、やる事が目茶苦茶よね。自分でそう思わない?」

啓吾   :  茉莉から顔を背けて横を向く。

茉莉   : 「あなたがあんな無茶をしたのは、何かバカげた英雄願望? それとも、あの彩香って子に夢中で我を忘れてたの?」

啓吾   :  茉莉から顔を背けたまま、

      「俺は、約束したんだ。あいつを守ってやるって」

茉莉   :  激した様子で、手を振り回し、

      「訳の分からない怪物と素手でケンカするのが、女の子を守る事? ふざけないでよ! その上、そんな怪我までして! 私は、啓吾を心配して言っているのよ!」

       手を腰に当てる。

啓吾   :  しばし、無言。やがて、

      「(ぽつりと)それでも‥‥、約束したんだ」

茉莉   :  しばらく啓吾を見つめる。やがて、

      「結局、自分のためね? 格好良い自分に酔っていられるあなたはいいけど、振り回される周りの人間はたまらないわね?」

啓吾   : 「(茉莉に顔を向け、初めて激しい口調で)仕事に穴を開けたのは悪かったと思っている! でも、俺は機械の部品じゃあない!」

茉莉   : 「組織の一員である事よりも個人である事を選ぶっていう事? 恰好良いわね」

啓吾   : 「(強い口調で)そんな事は言っていない!」

       目線を落とす。

      「(自信なさげに)ただ、俺は無責任でありたくないだけだ‥‥」

茉莉   :  手を腰に当てたまま、しばらく啓吾を見つめる。

       やがて、手を下ろす。

      「向こうから質問事項がいくつか来てるわ。あなたの責任の箇所よ。月曜日までに回答書を作って」

       踵を返す。


       去って行く茉莉、後ろ姿。

       画面パン。啓吾、見送る姿。


       啓吾、手すりにどさっともたれて、


啓吾   : 「『認めたくないものだな、自分自身の、若さ故の過ちというものを』、‥‥か!」*1



■シーン4■ 記憶の断片

*シーン4-1* 三軒茶屋のマンション、彩香の自室


       ベッドに上体を起こして座る彩香。目は手元に落としたまま。



*シーン4-2* 回想1


       回想。第1話シーン6。

       第4天上界西宮門前、咆哮する火竜。



*シーン4-3* 三軒茶屋のマンション、彩香の自室


       ベッドに上体を起こして座る彩香。目は手元に落としたまま。



*シーン4-4* 回想2


       回想。第5話シーン16。

       寝台に倒される小袖表衣姿の彩香。



*シーン4-5* 三軒茶屋のマンション、彩香の自室


       ベッドに上体を起こして座る彩香。目は手元に落としたまま。



*シーン4-6* 回想3


       回想。第6話シーン40。

       火竜小に右翼を噛み千切られ路上に投げ出される彩香。



*シーン4-7* 三軒茶屋のマンション、彩香の自室


       ベッドに上体を起こして座る彩香、両手で顔を覆う。

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