第6話 あなたを守りたいから(14/14)

       火竜大の角が更にスパークを放つ。再び啓吾の体に電流が走る。


啓吾   :「うあ!」


       火竜大、上腕部しかない右腕で啓吾の背中を打つ。

       啓吾、よろけて片膝をつく。


       歩道の植え込みの前。

       彩香、薄く目を開く。


       彩香からの情景、火竜大と啓吾。

       焦点が何度かぼやける。


彩香   :「啓吾さん‥‥」


       彩香、アップ。はっとした表情。

       起き上がろうとして視線を動かす。


       街路灯の上に火竜小。ズームアップ。

       牙を剥き出し、翼を広げて跳躍する。


       彩香、鶴翼をいっぱいに広げて、ほとんど地面すれすれに飛び出す。


彩香   :「(絶叫)啓吾さーん!」


       火竜小の右爪が彩香の右翼を刺し貫く。


彩香   :「ああっ!」


       啓吾と火竜大、同時に顔を向ける。


       彩香と火竜小、もつれるように路面に落下する。

       火竜小、首を起こすと彩香の右翼に咬みつき噛み千切る。


彩香   :「きゃああっ!」


       白い羽根が舞い散る。

       彩香の体が手前に投げ出される。

       火竜小、口を開き牙を剥いて彩香に食らいつこうとする。


火竜小  :「シャアアアア!」


       啓吾と火竜大、ほとんど同時に、


啓吾   :「彩香ーっ!」

火竜大  :「俺のだ。喰うなー!」


       火竜小、一瞬躊躇する。


       啓吾、左足を右前に踏み出す。

       腰を落とし、体を回し、火竜大の左脇の下に自分の左肩を入れる。

       火竜大の左腕を左肩に担ぐと、上体を前に倒す。


啓吾   :「りゃーっ!」

       啓吾、腰を跳ね上げる。火竜大の体が浮く。


       火竜大、脳天から路面に落下する。

火竜大  :「ぐぁっ!?」

       全身が宙に翻(ひるがえ)り、地面に仰向けに叩きつけられる。

       長い尾が火竜小を打ちそうになり、火竜小があわてて舞い上がる。


       自衛隊員、ロケット砲を発射する。

       軌跡を描いてロケット砲が飛び、火竜小を捕らえて炸裂する。


火竜小  :「ギャッ!」

       黒い影の様になって飛び散る。


       渋谷側、日本石油サービスステーション前に折り敷く自衛隊員。


       火竜大、身を起こして自衛隊を見る。

       その周囲に、細かな黒い影が集まり体に吸い込まれる。体が一回り大きくなる。

       火竜大、火炎球を吐き出す。


       自衛隊員、後退する。

       装甲車が火炎球を受け止める。衝撃は受けても壊れない。


       火竜大、ひるむ。

火竜大  :「くっ!」

       振り返る。


       彩香を抱きしめる啓吾。油断なく鉄筋を構える。


       火竜大、アップ。

火竜大  :「いつもよりも当てになる助っ人が来たようだな、ドモンケーゴ!」

       舞い上がる。


       ビルを越えて東に飛び去る火竜大。

       数発のロケット砲があとを追うが届かずに落下する。


       表参道方向から1台のSUV車(トヨタ・イプサム)が走って来る。

       停止して、翔と優香が飛び下りる。


翔    :「啓吾!」

優香   :「彩香ちゃん!」


       啓吾の腕の中の彩香、苦痛にうめく。


彩香   :「ううう! うう!」

       力尽きて意識を失う。翼がすっと消える。

啓吾   :「彩香っ!」


       自衛隊員が駆け寄って来る。


自衛隊員1:「お怪我は!?」

自衛隊員2:「担架だ! 早く!」



■シーン41■ 有明総合病院


       処置室を出て来る優香、ベンチから立ち上がる啓吾と翔。

       3人の動きに合わせてズームアップ。


       啓吾、優香、翔


優香   :「彩香ちゃんの翼は治療が出来ないそうよ」

啓吾   :「出来ないって、どういう事?」

優香   :「(ややヒステリックに)レントゲンにも何にも写らないんだそうよ!!」


       啓吾、アップ。


啓吾   :「で、彩香は?」


       優香、アップ。


優香   :「今、誰にも会いたくないそうよ」



第6話 終



【注釈】

*1:ここは、1997年に公開された映画『フィフス・エレメント』の有名なシーンのパロディ。

  判んないですよね?



 第7話(前編)は、11月6日(日)に掲載します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る