第6話 あなたを守りたいから(12/14)

■シーン37■ 渋谷


       啓吾、渋谷駅から駆け出して来る。上着をどこかに置いて来ている。


       宮益坂坂下。警官隊が通行止めをしている。

       大勢の群集が打ち騒ぐ。


警官   :「下がって! 下がりなさい!」


       啓吾、群集をかき分けて前に出る。2人の警官が啓吾を捕まえる。


警官1  :「ああ、君。ここから先は駄目だ。下がりなさい」

啓吾   :「放してくれ!」

警官2  :「この先は危険だ。民間人は立ち入り禁止だ」


       啓吾、左右の警官を交互に見る。おとなしく2、3歩下がる。

       警官、啓吾を放す。他の群集の整理を始める。

       啓吾、1歩踏み出すとジャンプする。


       群集の頭上を飛ぶ啓吾。


警官1  :「おい!」

群集   :「おおお‥‥?」


       啓吾、規制線の内側に着地するや駆け出す。


警官1  :「おい、こら!」

警官2  :「なんだ、ありゃ!?」


       啓吾、宮益坂を登り切る。

       ガスステーションの前で立ち止まる。手を膝について息を整える。

       咳込む。ツバを吐く。手の甲でよだれを拭う。肩で息をする。顔を上げる。

       ネクタイをはずして、その場に捨てる。

       再び走り出す。



■シーン38■ 青山通り


       啓吾、走る後ろ姿、俯瞰。

       青山学院大学の前まで来て、立ち止まり周囲を見回す。


啓吾   :「彩香!」


       啓吾、アップ。


啓吾   :「彩香っ!」


       啓吾、後ろ歩き。周囲を見回す。左手に国連大学ビル。

       振り返って、国連大学ビルとオーバルビルとの間の路地に気付く。

       向きを変えて、路地に駆け込む。



■シーン39■ コスモス青山、地下広場


       啓吾、地下広場へ降りる階段の最上部まで来て立ちつくす。


啓吾   :「彩香!?」


       地下広場。かべに、翼を広げて彩香。

       ズームアップ。

       彩香、鉄筋で右翼を貫かれ、地下広場の壁2.5m程の高さに打ち付けられている。

       彩香の白い翼、白い服、ビルの白いタイル張りの壁が赤い血糊で染まっている。


       啓吾、階段を駈け下りる。


       啓吾、貼り付けられた彩香の腰に取りすがる。


啓吾   :「彩香!」


       彩香、アップ。白い顔。目は閉じたまま。右頬に赤い血飛沫。

       血の気の失せた唇がかすかに動く。


       啓吾、ジャンプして鉄筋に取り付く。

       体を振り子の様に揺すって足を振り上げると、足を壁にかけて鉄筋を引き抜く。


       啓吾と彩香、路面に落下する。

       啓吾、腰をしたたかに打つが、すぐに体を起こす。

       彩香を抱き起す。


       啓吾の腕の中の彩香


啓吾   : 平手で彩香の頬を叩く。

      「彩香!」

       重ねて頬を叩く。


       啓吾、彩香を床面に降ろして立ち上がり、周囲を見回す。


啓吾   :「火竜! 何のまねだ!」


       国連大学ビルの一角が崩れて、破片が通路、階段、地下広場に飛び散る。

       崩れた箇所から火竜大が現れる。


       火竜大、階段の最上部に立って、


火竜大  :「貴様をおびき出すためのエサだ、ドモンケーゴ!」


       啓吾、地下広場から火竜を見上げて、


啓吾   :「なんだと」


       火竜大、アップ。


火竜大  :「貴様にはさんざんふざけた真似をしてもらったからな。たっぷりと礼をさせてもらうぞ」


       啓吾、鉄筋を拾い上げる。

       ヒン曲がっていた鉄筋を、両手で握り、膂力でまっすぐに戻す。

       八双に構える。


       火竜大、嘲るように口を歪める。


火竜大  :「死ね、ドモンケーゴ!」

       火炎球を吐き出す。


       地下広場に火炎球が着弾する。啓吾、画面右に飛んでかわす。


       火竜大、更に火炎球を吐き出す。


       啓吾、画面左に飛んでかわす。更に3発目は路面に転げてかわす。


       火竜大、脇の街路樹を引き抜くと、地下広場に投げ込む。


       啓吾、街路樹をかわす。が、枝にかすられて鉄筋を取り落とす。


       仰向けに倒れる啓吾。

       ズームアウト。啓吾の左側は壁、奥は壁、右は投げ込まれた街路樹。逃げ場を失う。

       身を起こして立つ。

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