（仮題）1998年夏

第６話 あなたを守りたいから（10／14）

■シーン２８■　東京上空

　　　　　　　ヘリコプターが、火竜を遠巻きにするようにビル街上空を飛ぶ。

スタジオ　：「立花さん、鳥は襲って来たりはしませんか？」

レポーター：「大丈夫です。こちらは、ヘリコプターの機内ですので！」

　　　　　　　ヘリコプターのコクピット。

レポーター：「もうちょっと近づけない？　正面から撮れないかな」

パイロット：「やってみましょう」

　　　　　　　火竜とヘリコプター。ヘリコプターが火竜の前面を横切るように飛ぶ。

　　　　　　　火竜、不満げに喚く。

火竜　　　：「ギャア！」

　　　　　　　ヘリコプターのコクピット

レポーター：「もう一回」

　　　　　　　ヘリコプターが旋回する。

■シーン２９■　日山食品東京第二事業所

　　　　　　　テレビの前の彩香たち、画面に食い入るように見る。

　　　　　　　テレビ画面、火竜の正面を捕らえる。火竜が口を開く。光を放つ。

■シーン３０■　東京上空

　　　　　　　火竜、火炎球を吐き出す。ドン！　という衝撃音。

　　　　　　　火炎球がヘリコプターを直撃して撃ち抜く。

　　　　　　　火だるまとなったヘリがサントリービルに落下する。爆発しビルが炎上する。

　　　　　　　火竜、更に火炎球を吐き出す。

　　　　　　　火炎球が赤坂プリンスホテルの中程を直撃する。

■シーン３１■　日山食品東京第二事業所

　　　　　　　テレビの前で総立ちになる彩香たち。

　　　　　　　テレビ、画面がノイズでかき消える。すぐに切り替わって、火災を起こした赤坂見附付近の状況を映し出す。

キャスター：「‥‥なお、付近は大変に混乱しており、状況は正しく掴めておりません。火災の原因はまだ確認されておりません。火災の原因は不明です！」

　　　　　　　彩香、駈け出す。

優香　　　：「彩香ちゃん！」

　　　　　　　階段を駈け上がる彩香。正面から。

彩香　　　：「駄目よ、駄目よ！　あんな街中で火竜を暴れさせちゃ！」

　　　　　　　階段を駈け上がる優香、上から見下ろした構図。

優香　　　：「彩香ちゃん、待って！」

　　　　　　　階段を駈け上がる彩香。

彩香　　　：「風は海風、安定してる。うまく掴めば羽衣なしでも距離が飛べる！」

　　　　　　　屋上の鉄扉を開いて駆け出す彩香。

　　　　　　　紺のカーディガンを脱ぎ捨てて、白いサマードレス姿になる。

　　　　　　　ジャンプする。

　　　　　　　彩香、両腕を広げてビルから落下する後ろ姿。その向こうに、自動車が行き交う道路。*1

　　　　　　　彩香の体が光に包まれる。両肩から翼が伸びる。

　　　　　　　白い羽を広げた彩香が、ビル街の上空へ舞い上がる。

　　　　　　　開けっ放しの出入口から駆け出す優香。

優香　　　：　手すりに駆け寄って、

　　　　　　「彩香ちゃん！」

■シーン３２■　成田空港

　　　　　　　ロビー俯瞰。

アナウンス：「日山食品株式会社の土門啓吾様。お近くのサービスカウンターまでおいで下さい」

　　　　　　　カウンターの案内員から電話の受話器を受け取る啓吾。

啓吾　　　：「どうも」

　　　　　　　アップ。受話器を耳に当てる。

■シーン３３■　日山食品東京第二事業所

　　　　　　　事業所の優香、オフィス電話に向かって、

優香　　　：「啓吾君、大変！　彩香ちゃんが飛び出して行っちゃった！」

■シーン３４■　成田空港

　　　　　　　啓吾、受話器をカウンターに置き駆け出そうとする。背後に茉莉。

　　　　　　　ピントは、始め啓吾に。

茉莉　　　：「啓吾？」

啓吾　　　：　振り向く。

　　　　　　　焦点移動、茉莉にピント。啓吾を不思議そうな様子で見つめる。

　　　　　　　啓吾、顔を茉莉に向けて、

啓吾　　　：「茉莉、ごめん！」

　　　　　　　啓吾、駈け出す（手ぶら）。

茉莉　　　：「啓吾!?」