第6話 あなたを守りたいから(4/14)
*シーン7-5* リビング
部屋から出て来る彩香。
珍しく長袖のブラウスに生成りの綿のロングスカート。ブラウスの裾は出したまま。
背中に垂らしていた髪をアップにしてピンで留める。
襟足が白い。
啓吾、窓の前。彩香を目で追う。
彩香、振り返って、
彩香 :「あ! 残り物ばかりで良ければですけど?」
啓吾、窓の前。あわてた様にタオルで体をパタパタと叩き、
啓吾 :「あ! いや、全然‥‥。むしろ、‥‥助かる」
彩香、安堵した様な笑みを浮かべる。
キッチンに立ってお茶の支度。
カップに紅茶を注いでソーサーに乗せ、盆にのせて啓吾に持って来る。
啓吾、ソーサーとカップを受け取り、バスタオルを渡す。
啓吾 :「サンキュー」
窓の外で稲妻。
啓吾、振り向いて首をすくめる。
雷鳴。
啓吾、窓から一歩離れる。
左手でソーサーを持って、立ったままで紅茶を飲む。
啓吾 :「ああ、そうだ。前から聞こうと思ってたんだけど、彩香たちって、普段何してるの?」
彩香、ランドリールームの前で振り返り、
彩香 :「え? あたし達?」
啓吾、窓の前。
啓吾 :「つまり、お前の世界では」
彩香、戻って来る。
彩香 :「(考え、考え)色々ですよ。お仕事したり、おうちの事をしたり」
啓吾、窓の前。
啓吾 :「彩香くらいの歳では?」
紅茶を飲む。
彩香、戻って来て窓辺に寄る。啓吾を見、首を傾げて考える。
彩香 :「多分、裁縫学校は終わって、学問所に行っているんじゃあないかなあ。それくらいだと思います」
啓吾 :「裁縫学校?」
彩香 :「(うなずいて)天女は、10歳から15歳までは裁縫学校に通うんです」
啓吾 :「裁縫やるの?」
彩香 :「いえ、学科は男の子達の行く初等学校と同じで読み書きとか算術とか。ただ、天女は15歳までに羽衣が縫えなくちゃいけないから、それだけはやるんです。
その前は、男の子達と一緒の幼年学校。
どうしてですか?」
啓吾 :「ん? うん‥‥。(紅茶を飲み干す) その『学問所』ってのはみんな行くんだ?」
彩香、啓吾からカップとソーサーを受け取りキッチンに持って行く。
彩香 :「(移動しながら)裁縫学校を終えれば一人前って事にはなってますけど、大抵は行きますね。更にその上の大学寮に進む人もいますけど、それは本当に学者になるとか、お医者さんになるとか」
彩香、カップを洗いながら、
彩香 :「裁縫学校を出てすぐに働いたり、結婚しちゃう天女もいますよ。特に宮仕えをする天女は、裁縫学校を出たらすぐに、それぞれの宮に入って研修生になるんです」
啓吾、窓の前。
啓吾 :「宮仕え?」
彩香、カップを洗い終えて、タオルで手を拭きながら、
彩香 :「第3天上界の白雲の都に色々な宮があって、そこで働く天女達がいるんです」
啓吾、窓の前。
啓吾 :「ふーん。お宮の巫女さんだな?」
彩香、クスッと笑う。
戻って来る。
彩香 :「でも、宮仕えは厳しいし難しいから、あたしは普通に学問所に行っているんじゃないのかなぁ」
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