第5話 過ぎ行く夏の日(13/13)

■シーン26■ 新宿、小田急線新宿駅、地上階ホーム


       発車ベルが鳴り響く。


       特急電車の乗車口前に和子。別のホームから電車が走り出す音。

       和子の前に啓吾と、翔、優香、彩香。


和子   :「じゃあ、あんた。仕事もいいけど、食事もちゃんと摂るんだよ」

啓吾   :「(うるさげに)はいよ!」

和子   :「母さん、心配だねえ」

啓吾   :「ずうっと一人でやって来てんだよ」

和子   :「外食ばかりしてるんじゃあないよ」

啓吾   :「はいよ」

和子   :「当てにならない返事だねえ。(視線を優香たちに向けて)皆さんも、せっかくのお休みにこんな見送りをさせてしまって、ごめんなさいね」


       翔、優香、彩香、にこやかに。


優香   :「いえ。今回はゆっくりとお話出来なくて残念でした」

和子   :「(残念そうに)そうなんですよ。今回はこのバカ息子が急に忙しくなるものだから」

啓吾   :「バカで悪かったね」

和子   :「秋の個展には、きっといらして下さいね。彩香さんもね!」

彩香   :「はい。必ず!」


       ベルが鳴り出す。


啓吾   :「ほら、母さん。汽車が出るから」

和子   :「汽車って、あんた、いつの時代の人間だい?」

啓吾   :「電車が出るよ!」

和子   : 鞄を持って列車に乗り込む。

      「(啓吾に)じゃあ、あんた、本当に健康にだけは気をつけるんだよ」

啓吾   :「はいよ」

和子   :「睡眠時間もしっかり取って!」

啓吾   :「分かったから!」

和子   :「じゃあ、皆さんもお元気でいらして」

       ドアが閉まる。


       車内からの情景。ドアが閉まる。窓の外、啓吾達の立つホームが後ろに下がって行く。


       ホームからの情景。ホームを出て行く特急列車を見送る啓吾たち。


       啓吾、翔たちに振り返る。


啓吾   :「悪かったな。つきあわせちまって」

翔    :「いやぁ。俺達が声を掛けたんだから」



■シーン27■ 新宿西口


       啓吾たち、駅の建物から、外の雑踏の中に出る。

       ミロード・モザイク通りの入口あたり。


啓吾   :「えーと、それで? 今日はどういう予定なの?」

翔    :「(済まなげに)それなんだけどな、啓吾。実は、俺と優香、今日は芝居見に行くはずだったのを忘れてたんだよ」

啓吾   :「(怪訝な顔)え、そうなの!?」

優香   :「そうなのよぉ。だものだから、今日一日、彩香ちゃんをよろしく!」

       彩香を前に押し出す。

彩香   :「(あわてて)え!? え!?」

啓吾   :「(とまどい顔)お、おい」


       歩き出す翔と優香。手を振って、


翔    :「ワりいな、啓吾!」

優香   :「帰りは、ちゃんと送ってあげてねー!」


       翔と優香、雑踏の中に消えて行く。


       啓吾と彩香、雑踏の中に取り残されて茫然。

       顔を見合わせる。


啓吾   :「(当惑げに、そして、少し眩しげに)‥‥久し振り」

彩香   :「(頭を下げて)お久し振りです。(啓吾を見上げて)啓吾さん、お痩せになりましたね!?」

啓吾   :「そぉお!?」

       自分の頬やあごに触れてみる。

      「夏痩せかね?」

       彩香を見て、

      「なんか旨いもの、食いに行こうか?」

彩香   :「はい!」


       ゆっくりとズームアウト。

       雑踏の中の二人、俯瞰。

       画面に背を向けて歩き出す。


       雑踏、ズームアウト。

       新宿の街、東京の街並、やがて、かなたに東京湾が見えて来る。



■シーン28■ 東京湾


       海中。細かな泡が海面に上がって行く。画面が次第に暗くなる。


       水中に巨大な黒い影。目が一つ輝く。

       影の輪郭が崩れ、次第に大小二つに分かれる。

       暗い水中に、三つの目が開く。瞬きする。

       奇声が起こる。

      「ギャアアアアア!」

       翼の様な影を広げる。気泡が激しくなって画面を埋めつくす。



第5話 終



【注釈】

*1、*2、*3、*4

 リメイクアニメも始まった事だし。

 今回は、特に注釈の必要はないですよね! ね!?



 第6話(前半)は、10月23日に。

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