第5話 過ぎ行く夏の日(11/13)
啓吾、携帯を握り直して、
啓吾 :「な、何、邪推してんだよ?」
優香の声 :「邪推じゃないじゃない!」
*シーン24-6* 三軒茶屋の優香のマンション
優香 :「啓吾君、あなた少しはっきりしなさいよ!」
*シーン24-7* 中野路上の啓吾
啓吾、携帯電話を見つめる。
カチンと来た表情。
再び携帯電話を耳に当てる。
啓吾 :「(かみつく様に)あのねえ、優香ちゃん!」
*シーン24-8* 三軒茶屋の優香のマンション
優香 :「(怒鳴り返す)なによー!」
*シーン24-9* 中野路上の啓吾
啓吾 : 携帯を耳から大きく離す。思わずしばし見つめる。
携帯を再び耳に当てる。
「(気萎えた声で)いや‥‥、まあ、いいよ。
(妥協を試み)とにかく、彩香と替わってもらえる?」
*シーン24-10* 三軒茶屋の優香のマンション
優香 :「(憮然と)替わるわよ!」
*シーン24-11* 中野路上の啓吾
啓吾。顔を歪めて空を見上げる。少しして、
彩香の声 :「(妙に間延びした声)もしもしーぃ?」
啓吾 :「(携帯にかじりつくように)彩香かっ!? すまん! 俺、うっかりして!」
彩香の声 :「啓吾さーぁん? うーん。優香さんたちと銀座でお食事しちゃったーぁ」
啓吾 :「ほんとに悪い! 彩香、お前っ! (ふと、怪訝な顔)」
彩香の声 :「それでねえ、プランタンでお買い物したのぉ。とーってもかわいいのぉ。今度啓吾さんにも見せてあげますねぇぇ」
啓吾 :「(怪訝な顔で)彩香、お前、もしかして‥‥、酒かなんか飲んでる?」
*シーン24-12* 三軒茶屋の優香のマンション
彩香、トロンとした目。壁にもたれて固定電話の受話器を握って、
彩香 :「(ご機嫌な様子で)少ーし!!」
*シーン24-13* 中野路上の啓吾
啓吾 : 爆発する。
「しょーがねーな、優香ちゃんはよ!!」
彩香の声 :「(声のみ)あらーぁ、啓吾さんもお酒呑んでたって伺いましたよぉ、どなたかとーぉ?」
啓吾 :「(絶句)え!?」
*シーン24-14* 三軒茶屋の優香のマンション
彩香 : あくまでトロンと、
「なあんて。ふふ! いじめちゃいました。でも、本当は心配してたんですよぉ!」
*シーン24-15* 中野路上の啓吾
啓吾 :「(手も足も出ず)悪かったよ」
彩香の声 :「明日は送って下さいねー」
啓吾 :「あ‥‥。その件なんだけどな、彩香」
*シーン24-16* 三軒茶屋の優香のマンション
彩香。壁にもたれて、ほとんど目が閉じそうな状態で、
彩香 :「ふーう?」
*シーン24-17* 中野路上の啓吾
啓吾 :「実は、俺、明日からしばらく本社詰めで、そっちに行けそうにないんだ」
*シーン24-18* 三軒茶屋の優香のマンション
彩香、目を見開く。もたれていた体を跳ね起こす。しばし絶句。
啓吾 :「(正気な声で)そう、なんですか?」
*シーン24-19* 中野路上の啓吾
啓吾 :「(言いにくそうに)そうなんだ。それで、お前のバイトの件なんだけど‥‥」
彩香の声 :「あ! 啓吾さん? あたし、続けます、お仕事。面白いから」
啓吾 :「(けげんな顔で)面白い、のか?」
*シーン24-20* 三軒茶屋の優香のマンション
彩香 :「操作が難しそうだけれども、頑張れば面白いと思うんです」
*シーン24-21* 中野路上の啓吾
啓吾、ショックを受けた表情。
*シーン24-22* 三軒茶屋の優香のマンション
彩香、しばらく受話器に耳を傾ける。口を開く。
彩香 :「大丈夫ですよぉ。行き帰りは地下鉄だし、優香さんも一緒だし。それに、啓吾さんが心配されるような無茶はしません。あたし、決めましたから」
*シーン24-23* 中野路上の啓吾
啓吾の耳元、携帯電話から、
彩香の声 :「啓吾さんに守って頂くって!」
啓吾、殴られた様な表情。
*シーン24-24* 三軒茶屋の優香のマンション
彩香、しばらく、受話器に耳を澄ませている。
しばらくして、
彩香 :「(けげんな様子で)どうかされましたか?」
*シーン24-25* 中野路上の啓吾
啓吾、夜空を見上げる。苦笑する。
*シーン24-26* 三軒茶屋の優香のマンション
彩香 :「啓吾さぁん?」
*シーン24-27* 中野路上の啓吾
啓吾、視線を戻す。ふっ切れた様子で、
啓吾 :「守ってやるよ!」
*シーン24-28* 三軒茶屋の優香のマンション
彩香、息を飲む。
*シーン24-29* 中野路上の啓吾
啓吾 :「守ってやる」
*シーン24-30* 三軒茶屋の優香のマンション
彩香、幸せそうに微笑む。
彩香 :「うん!」
*シーン24-31* 中野路上の啓吾
啓吾 :「元気でいろよな。しばらく、(言葉につまる)しばらく、会えないか知れないけど、元気でいろよ。俺も頑張る」
*シーン24-32* 三軒茶屋の優香のマンション
彩香、笑顔。でも、目に涙。
*シーン24-33* 中野路上の啓吾
啓吾 :「彩香も頑張れ」
啓吾。携帯電話を切って上着の内ポケットに戻す。
啓吾、上着を右肩に担ぎ、前を見る。
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