第5話 過ぎ行く夏の日(8/13)

■シーン17■ 月曜日の朝

*シーン17-1* 市街地


       新聞配達員が、各戸に新聞を入れていく。スズメの声。



*シーン17-2* 山田所長宅


       山田所長、新聞を開く。


山田所長 :「おっ!」



*シーン17-3* 井上響子課長宅


       井上課長、食卓でパソコンのモニターを見ながら、


井上   :「あらぁ!」

       マウスを操作する。



*シーン17-4* 国立(くにたち)、翔の自宅


       翔、庭に面した廊下で新聞を開く。


翔    :「へえ!」


       廊下を美羽(翔の姉、会社員)が歩いて来る。出勤着。


美羽   :「(奥の部屋へ向かって)美空もいい加減に起きなさい!」

       翔の後ろを通る。翔を突き飛ばしていく。


       翔、危うく庭に落ちそうになって振り仰ぐ。

       美羽、憤然とした様子で歩み去る。


       廊下の奥から美空(翔の妹、大学生)の声。


美空   :「(声のみ)いいのぉ! 夏休みなんだからぁ!」


       翔、廊下の奥へ振り返る。



■シーン18■ 啓吾のアパート


       ダイニングテーブルに広げられる新聞紙。


和子   : ダイニングで食事をしながら、

      「あんたの会社もすごいねえ! オーストラリアのキャンベラ航空と機内食業務の提携ですってよ」


       啓吾、6畳間でネクタイを締めながら、聞き返す。


啓吾   :「えー?」


       ダイニングに出て来る啓吾、新聞を覗き込む。


       新聞紙面、アップ。「仮調印」の文字


啓吾   :「(つぶやき)事業推進部か‥‥、茉莉の部署だな‥‥」

和子   :「あんたの会社も、あやしげなインスタント食品作っているばかりじゃあないんだね」

啓吾   :「あのね。機内食ってのはインスタントなの」

       6畳間に戻って行く。

和子   :「そんな事はないだろう? この間、ニューヨークに行った時の機内食は美味しかったよ」

啓吾   :「それもインスタントなの!」

       啓吾、鏡を覗いて髪の乱れを直して、

      「大体、狭い飛行機の中できちんとした料理が出来る訳がないだろう?」


       啓吾、鞄と上着を手に6畳間から出て来る。


啓吾   :「じゃあ、行って来る。母さんは、今日はどこか行く?」

和子   :「午後から、銀座の杉山さんとお会いするね。夕食はいいよ」

啓吾   :「(ちょっと嫌な顔)そんな事聞いてないよ。(表情を戻して)朝倉先生とは会う?」

和子   :「今日は会わないけど、会って行きたいとは思うね。なぜ?」

啓吾   :「この間の彩香の事でお世話になっているから、母さんからもお礼を言っておいて」

和子   :「ふーん」

啓吾   :「じゃ!」

和子   :「いってらっしゃい」


       玄関を出て行く啓吾。キッチンの窓ガラスにシルエットが映る。

       和子、新聞紙をかざして、


和子   :「ふーん。インスタントねぇ。大したもんだねぇ」

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