第4話 コンビネーション(14/14)

■シーン29■ 夜の有明総合病院、待合室


       翔と優香、驚き顔。


翔    :「天女!?」

優香   :「彩香ちゃんが!?」


       啓吾と彩香。彩香は左手に包帯。


啓吾   : 頭を下げる。

      「済まない。二人まで巻き込んじまって。彩香はやっぱり俺が引き取るから」


       翔と優香。


翔    :「す、済まないで済むかよ、啓吾、お前! そんな大事な事隠してやがって。俺と優香はもう少しで死ぬ所‥‥」

優香   :「(遮る様に)そうよ! 黙っているなんて水臭いわよ。あたしを何だと思っているのよ!」

翔    :「そうだ! 俺を何だと‥‥」

       優香を見て、

      「え!?」


       優香、手を腰に当ててふんぞり返って、


優香   :「そんな事でわたしが怯むとでも思ってたの? その上、今更、引き取るですって!? 冗談じゃないわよ。引き受けるって言った以上は、とことん引き受けるわよ。彩香ちゃんは、もう、わたしの家族なのよ」


       翔、優香を頭の天辺から爪先まで眺め回して、あわてて啓吾の方を向いて。


翔    :「そ、そうだぞ、啓吾! 俺が言ってんのも要するにそういう事なんだぞ!」


       啓吾と彩香。


啓吾   :「優香ちゃん‥‥、翔‥‥」


       優香と翔。


翔    :「(穏やかに)あの化け物はまた来るんだろう、彩香ちゃんを狙って?」

優香   :「あたし達だって力になるわよ!」


       啓吾と彩香、顔を見合わせる。


       優香と翔、啓吾達に背を向けて歩き出す。


優香   :「それより、今はお腹空いた。早く帰って何か食べよう!」

翔    :「俺もくたくた。優香、今夜は絶対泊めてもらうぞ」

優香   :「ご自由に。でも、寝るのはダイニングよ」

翔    :「ええ!? さっきと話が違う!」

優香   :「うるさいわね。嫌なら国立(くにたち)に帰りなさいよ」


       啓吾と彩香、見つめ合って、


啓吾   :「よく、あの二人を守ってくれたな」

彩香   :「『逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ』って自分に言い聞かせていたんです」


       啓吾、固まった様に彩香を見つめる。

       BGM、『残酷な天使のテーゼ』、イントロ、4小節。


啓吾   :「お前、それってちょっと違うぞ」


       二人、優香達に続いて歩き出す。


彩香   :「あ、知らないんだ? タツノコなんですよ」*3



第4話 終



【注釈】

*1 『今週のびっくりどっきりメカ』

 タツノコプロのナンセスンスヒーローギャグアニメ『ヤッターマン』で、支援メカ・ヤッターワン等の口から出て来る決戦メカ!

 ブタもおだてりゃ木に登るー!

*2 『実体を見せずに忍び寄る黒い影』

 正しくは、「実体を見せずに忍び寄る白い影。科学忍者隊ガッチャマン!」

 ヒーローは折り目正しく名乗らねば!

*3 『タツノコなんですよ』

 「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ」の『新世紀エヴァンゲリオン』は、「ガイナックス作品」あるいは「庵野秀明作品」というのが世間の通り相場でしょうが、1995年放送のテレビシリーズのアニメ制作は、実は、往年のヒットメーカー・タツノコプロだったという、どうでも良い様な小ネタでした。



第5話(前半)は、9月25日に公開します。

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