第4話 コンビネーション(11/14)

■シーン22■ 首都高速


       翔のタウンエース・ノア・フィールドツアラー。

       車内、2列目座席。シートにもたれて眠る彩香。

       運転台に翔、助手席に優香


優香   : 後部座席を覗いた後、

      「彩香ちゃん、寝ちゃった」

翔    :「疲れたんだろう? 大活躍したもんな。(大袈裟に)あーあ、俺も疲れた。なぁ、今晩泊めろよ」

優香   :「んー? あたしはいいけど、明日、着て行く服ないわよ」

翔    :「あ、そうか‥‥。ちぇ。不便になったな」

優香   :「文句言わないの。美女が二人でお相手してあげてるでしょう?」

翔    :「(ニヤッと笑って)あっ! 今の言い方、卑猥」

優香   :「ばか。啓吾君に頭かち割られるわよ」

翔    : ヒッと肩をすくめる。


       渋滞の最後尾につく翔のタウンエース・ノア。


       彩香、車が停止しかすかに揺れるが、眠ったまま。


       翔と優香。


翔    :「なあ」

優香   :「ん?」

       チョコの包みを剥いて翔に食べさせる。

翔    :「啓吾は、本当に彩香ちゃんの事、何とも思っていないのかなあ?」

優香   :「(首を傾げて)うーん。大切には思っているんだろうけど、やっぱり違うんじゃないのかなぁ。‥‥ただ、茉莉さんに対する態度も、確かに前と違うのよね?」

翔    :「違うかあ? 相変わらず、言われっ放しだぜ」

優香   :「うーん。でも、前みたいな熱っぽさを感じないのよ」

翔    :「あいつもなぁ、いい加減で見切りをつければいいのによぉ」

優香   :「ふふふ。翔の動機は不純よねぇ。いいわよ。今日、少し休んでいっても」

翔    :「本当? ラッキー!」

優香   :「その代わり、明日遅刻しないでよ」

翔    :「分かってます。感謝してます、お姉様」

優香   :「調子いい。あ、動いた!」

       周囲の車が動き出す。

       翔、ギヤを入れる。

       ドン、と鈍い音がして車が大きく沈む。


       彩香、衝撃で投げ出されそうになり、


彩香   :「え? なに?」


       後部座席から運転台を望む。

       サンルーフが突き破られ、火竜の腕が入って来る。


翔    :「うわーっ!!」

優香   :「何これー!?」

       車が激しく縦揺れ。


       彩香、激しく揺れる中で必死に取っ手に掴まり、


彩香   :「火竜!」


       運転台のサンルーフを下から望む。

       カバーが千切れ飛び、火竜の姿が現れる。


火竜   :「(大口を開け)ギャー!」

翔    :「化け物!」

       入って来る火竜の頭を押し戻そうとする。

      「優香! 彩香ちゃん! 逃げろ!」


       優香、パニック。


優香   :「(頭を抱えて)きゃー! きゃー!」


       翔、火竜の爪に挟まれてサンルーフから引きずり出される。


翔    :「うわーっ!」


       彩香


彩香   :「翔さん!」

       ジャージを脱ぎ捨てタンクトップ姿になる。


       翔の車。左前方から外観。

       火竜、車の屋根に乗り翔を引きずり出す。

       彩香、スライドドアを開け、翼を広げて飛び出す。


       彩香、腕輪を構え光弾を撃ち出す。


       火竜の右手首に光弾が直撃し、翔を放す。


火竜   :「(悲鳴)ギャ!!」


       翔、道路に投げ出される。首を起こして。


翔    :「彩香ちゃん!?」


       火竜が舞い上がった弾みに車が宙に投げ出される。


彩香   :「優香さん!」

       光弾を撃ち出す。


       車の助手席のドアロックを光弾が撃ち飛ばす。扉が開く。

       彩香、落下する車とすれ違う様にして、助手席から優香を救い出す。

       車は渋滞の中に落下し炎上する。


       彩香、着地。優香を残し、すぐに舞い上がる。


優香   : 路上に放り出されて、

      「あれが彩香ちゃん!?」


       彩香、横に飛びながら「九耀の腕輪」を構える。

       腕輪の九耀紋が光を放ち「帝釈」の文字が浮かび上がる。

       光弾を撃つ。


彩香   :「えい!」


       火竜、一瞬、白い羽に包まれて光弾を弾くと、彩香に踊りかかる。

       彩香、沈み込みつつ光弾を撃ち出す。

       火竜、白い羽を展開する。

       光弾が、下から抉り込むように火竜の胸の赤い皮膚部分に命中する。


火竜   :「ギャッ!」

       弾け飛ぶ。


       火竜、弾き飛ばされ、乗用車のボンネットに背中からぶつかり身を起こす。


火竜   :「ギャアアア!」


       火竜の尾が標識塔を直撃する。

       標識塔が倒れ、道路の車を下敷きにする。数台が炎上する。

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