第4話 コンビネーション(10/14)

       啓吾のカローラ、正面から。

       雨が、激しくフロントガラスに叩きつける。時々雷鳴。

       啓吾と彩香、座席につきシートベルトを締める。


啓吾   :「彩香、雷は今、どの辺りだ?」

彩香   :「左後方、下の方。東斜面に回り込みながらゆっくりと登って来ています」

啓吾   :「東か。よし!」

       啓吾、車をバックさせる。


       啓吾の車、分岐点まで戻って止まる。


啓吾   :「彩香、地図」

彩香   :「はい(開いた地図を渡す)」

啓吾   :「(一瞥し)駄目だ。細すぎて載ってないや。後は記憶が頼りだな」

       翔の車が分岐点まで戻って来る。

       啓吾、車を発進させる。


       翔のタウンエース・ノアからの眺め


翔    :「啓吾の奴、見晴台に戻る気かな?」

優香   :「行き止まりでしょう?」


       啓吾のカローラ。


啓吾   :「後ろ、ついて来ている?」

男子1  :「来てますよ。2台とも」


       翔のタウンエース・ノアからの眺め

       前方の啓吾のカローラが不意に藪の中に乗り入れる。


翔    :「なーにー!?」


       行列後方から。翔の車、続いてカリブが藪に乗り入れる。


       啓吾のカローラ、正面から


啓吾   :「道悪いから、掴まっててよ!」


       翔のタウンエース・ノア。大きくバウンドする。


翔    :「こ、これが道かよ!?」

優香   :「『轍(わだち)』って感じね!」


       啓吾のカローラ。激しい雷鳴。


啓吾   :「彩香。雨強くなってないか? この道、これ以上降ったら『川』だからな!」

彩香   :「でも、雷からは遠ざかっています。もうじき止みます」


       翔のタウンエースのサンルーフからの眺め、雲が薄くなって来る。


レイ   :「雨が止んだ!」


       林間を抜けて県道に出る啓吾のカローラ。

       続いて翔のタウンエース・ノア、更にカリブが出て来る。


レイ、由美:「ナイス・コンビネーションね!」


       関越自動車道。「練馬 140km」の標識の下。3台の車が走り抜ける。



■シーン18■ 日山食品第2事業所前


社員1  :「お疲れ様でしたー」

女子1  :「お疲れー」

啓吾   :「じゃあ、俺は三島さんに車返してから帰るから」

翔    :「(心底疲れた声で)どうも、お疲れなー」

       啓吾、茉莉を促して車に乗り込む。


       啓吾のカローラ、去って行く。


       彩香、路上に立って見つめる。


優香   :「彩香ちゃん」

彩香   : 振り向く。

翔    :「(言いにくそうに)あ、のさ。彩香ちゃん」

彩香   : 嬉しそうに、

      「茉莉さんて素敵な方ですね」

       再び、カローラの去った方を見て、

      「ほっとしました。啓吾さんて、あんなにいい人なのに、回りに誰もいないみたいだったんだもん」

       再び、振り返り、

      「帰りましょう? 疲れちゃいました」

翔    :「そ、そうだよな。帰ろ、帰ろう」


       3人、車に乗り込む。



■シーン19■ 啓吾の帰路


       啓吾のカローラ。日比谷通りを走る。


茉莉   :「そこでいいわ」

啓吾   :「ん? 中野まで送るよ」

茉莉   :「いいわ。遠回りでしょう?」


       人けのない東京駅丸の内口。車を降りる啓吾と茉莉。


茉莉   :「今日はありがとう。楽しかった」

啓吾   :「あの‥‥、食事でもどう?」

茉莉   :「遅いから。今度、時間を作って! 話があるの」

啓吾   :「分かった」

茉莉   :「じゃ」

       車を離れる。


       駅構内に消えて行く茉莉の後ろ姿。


       見送る啓吾。

       ふいに歓声が沸き起こる。



■シーン20■ 回想


       武道館、場内に満ちる歓声が、一時静まる。

       向かい合う二人の剣士。

       啓吾。中段に構えていた竹刀を、スルスルと上げて上段に構える。

       相手、誘われた様に踏み出す。

       駆け違う二人の剣士。乾いた音。


審判   :「面あり! 一本!」


       高まる歓声。ふいの静寂。



■シーン21■ 東京駅丸の内口


       夜の東京駅丸の内口。静寂の中、立ちつくす啓吾

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