第4話 コンビネーション(9/14)

■シーン17■ 豪雨


       激しい雨の中、ゆっくりと山道を下るタウンエース・ノアとカリブ。啓吾のカローラのみ遅れている。


       検問所。車から降りる翔。

       検問所の係官とやりあう。


翔    :「そんな。降り始めたばかりでしょう?」

係官   :「一昨日まで、この辺りは大雨でね。水を含んでいて危険な状態なんだ」


       翔、車に戻って来て。


翔    :「参った。通行止だ」

レイ   :「えー?」


       彩香、アップ。


彩香   :「(独白)山の向こうは降っていないんだ‥‥」

       顔を上げて、

      「翔さん、地図を見せて頂けませんか?」


       彩香の膝に広げられる地図


由美   :「どうしたの、彩香ちゃん」


彩香   : 後部座席から運転台に身を乗り出して地図を示し

      「翔さん、ここの道を使って山の北側斜面に出るんです。こっちの道から帰れませんか?」

翔    :「(彩香から地図を受け取り、優香と目を合わせて)関越使って帰れるか。よし」


       啓吾のカローラ。追いついて、行列の最後につく。

       辺りが明るく光る。少し遅れて雷鳴。


茉莉   :「どうしたの?」

啓吾   :「どうやら、通行止らしいな」

茉莉   :「帰れるの、今日中に?」

啓吾   :「分からない」


       啓吾の車からの情景。翔の車が動き出す。


啓吾   :「お。動き出した」

       翔のタウンエースノア、続いてカリブが来た道を戻り始め、啓吾もカローラを発進させる。


       雨の中を進む3台の車。時折、稲光と雷鳴。


       啓吾の車からの情景。翔の車が分岐点で曲がる。


啓吾   :「(舌打ちし)あいつ、何やってんだ?」

       クラクションを2度、3度鳴らす。


       翔の車、後部座席の情景。しばしば揺れる。


レイ   :「お土産、誰に買ってたのよ?」

由美   :「えー、いいじゃない」

       急停車する。

レイ、由美:「きゃ!」


       運転台


翔    :「まずい!」

後部の面々: 身を乗り出して来て、

レイ   :「どうしたの?」


       道路の真ん中にバリケード。その先が崩落しているのが稲光に浮かび上がる。雷鳴。


       車内


レイ   :「どうするのー?」

由美   :「帰れないじゃない!」


       雨の中、啓吾が傘を差して走って来る。

       啓吾、車の窓を叩く。翔、窓を開く。


啓吾   :「何やってんだよ!?」

翔    :「何って‥‥」

啓吾   :「この道、去年の台風で流れたんだよ。途中に標識があっただろう?」

翔    :「いや、彩香ちゃんがこっちだって言うものだから」

啓吾   :「彩香? (後部座席を振り返る)」


       彩香、泣きそうな顔。


啓吾   :「(翔に向かって)何で彩香にナビやらすんだよ?」

彩香   :「ごめんなさい。山の反対側は雨が降っていないから、そちらに抜ければいいんじゃないかと思って」


       啓吾と翔、顔を見合わす。啓吾、後部座席を見る。


啓吾   :「(彩香を見つめて)お前、もしかして雨の位置が分かるのか?」

彩香   :「分かります」


       啓吾、しばらく彩香を見つめた後、翔に向かって、


啓吾   :「よし、翔。彩香と茉莉を交換してくれ。で、とにかく、元の道に戻るぞ。その先は俺が先導する」

翔    :「戻るったって、切り返せないぞ」

啓吾   :「500メートルくらい手前が広くなってたろう? そこで切り返せるよ」

翔    :「(うんざりした声で)そこまでバックか!?」

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