第4話 コンビネーション(8/14)

■シーン12■ 朝の保養所


       彩香、窓からの朝日に目を覚ます。小鳥の声。

       体を起こし室内を見回す。


       大口を開けて寝ている優香。その他数名。


       彩香、くすっと笑う。ふと、表情が強ばる。



■シーン13■ 夜の林間


       回想。木立の向こうの啓吾と茉莉。二人で歩み去る。



■シーン14■ 保養所、水場


       水道の流水。

       彩香、手で水をすくい顔をゆすぐ。


彩香   :「関係ないもん‥‥」

       頬からしずくが垂れる。



■シーン15■ 林


       彩香、林間を一人歩く。下草を踏み分ける足音。風の音。鳥の声。

       何かを見つけた様に顔を上げ向きを変える。


       杉の大木の根元に彩香。左手で幹に触れ、樹冠を見上げる。ジャージを脱いでタンクトップ姿になる。『九耀の腕輪』が光を放つと、肩から白い羽が広がる。まっすぐに舞い上がる。


       樹冠近くの枝に飛び乗る彩香。羽を納め、手で幹に触れて体を支える。


彩香   : 空を見上げて、

      「空が近い」


       青い夏空


       彩香、アップ。


彩香   :「帰りたい‥‥」

       涙が頬を伝う。



■シーン16■ 山頂見晴台


       翔の車を先頭に3台の車が山を登って来る。


       駐車場で車を降りる一行


社員1  :「涼しーい」

女子1  :「いい眺め!」


       各々、適当に散らばる社員達。


       彩香、駐車場の手すりにもたれて景色を眺める


       山並みの上によく晴れた空が広がる。


       彩香、アップ。


彩香   :「(ぽつりと独白)風が変わった‥‥。雨になるんだ!」

       振り返り、走り出す。


       彩香、駐車場の中程まで来て立ち止まる。


       啓吾と茉莉、手すりにもたれて、後ろ姿。


       動けない彩香。


       彩香、アップ。


彩香   :「やだ‥‥。あたし、何を意識しているんだろう」

       踵を返す。


       車の前に翔と優香。地図を眺めて何事か相談中。

       彩香が駆けて来る。


彩香   :「優香さん。翔さん」

翔    :「おー! どしたのー?」

彩香   :「ここ、早めに動いた方がいいですよ。じきに雨になりますよ」

翔    :「ん? (優香の方を向いて)そうなの?」

優香   :「うーん? 所によりにわか雨とは言ってたわねぇ?」

翔    :「(彩香に)大丈夫だよ。ほら、そこのレストハウスで昼食にする予定なんだ。他に食事出来る所もないから」


       翔と優香、相談を続ける。


優香   :「湿原まで見るのは無理でしょう?」

翔    :「うーん。ちょっと立ち寄る位なら‥‥」


       かなたの山並み。小さな雲が稜線に沿って登って来る。


       ぽつぽつと、路面に水玉模様のしみがつき始めたかと思うと、たちまち、はげしい豪雨になる。

       雨に包まれた山々に、雷鳴がとどろく。



第4話(後半)に続く(9月4日公開)

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