（仮題）1998年夏

第４話 コンビネーション（4／14）

■シーン４■　日山食品第２事業所前

　　　　　　　玄関前に、私服姿の社員達が集まってくる。

社員１　　：「おはよう」

社員２　　：「おはようございまーす」

　　　　　　　彩香を取り囲んで、数名の社員

　　　　　　　彩香、マンガのプリントの入ったグレーのタンクトップに、ピンクのラインの入った黒いトレパン。スニーカー。包帯は、すでに右腕にもしていない。

女子１　　：「この子が彩香ちゃん？　本当に美人ー」

女子２　　：「色、白いんだぁ」

女子３　　：「土門君から取り上げちゃったの？」

優香　　　：「そうよ。あたしの『妹』なんだから、いじめないでよ」

女子２　　：「そういえば、結構似てるかもぉ」

　　　　　　　翔の車（タウンエース・ノア・フィールドツアラー・ツインムーンルーフタイプ）が入って来る。

翔　　　　：「オース！」

社員１　　：「おはよう」

　　　　　　　翔、車から降りつつ、

翔　　　　：「梅雨明けて良かったな。これで全員？」

優香　　　：「あと、内藤さんの一家と啓吾君と‥‥」

翔　　　　：「啓吾？」

　　　　　　　一台のセダン（カローラ）が入って来る。クラクションを鳴らす。

　　　　　　　カローラの窓から、啓吾が顔を出す。

啓吾　　　　：「おはよう！」

　　　　　　　翔と優香、カローラに駆け寄って、

翔　　　　：「何だよ。バイクじゃないのかよ？」

啓吾　　　：「ははは。『今週のびっくりどっきりメカ』だ。人数が多いって聞いてたから、三島先輩から借りて来た」*1

翔　　　　：「気が利くぅ!!　女の子一人面倒みてると違うね」

優香　　　：「そうじゃないでしょう。違うわよ。今日は、相沢茉莉さんが来るからよ。ねぇ？」

啓吾、翔　：「（二人同時に）え!?」

優香　　　：「（向こうをむいて）ほら、来た」

茉莉　　　：「おはようございます」

　　　　　　　歩いてやって来て、近くの社員に頭を下げる。

　　　　　　　茉莉の服装。濃いダークグレーのサマーセーターにネッカチーフ、黒いコットンパンツ。真新しいトレッキングシューズ。

　　　　　　　ウエストのラインまで届くロングヘア。

　　　　　　　彩香を囲んでいた社員達。

女子１　　：「本社の事業推進部の相沢さんだ」

女子２　　：「本当だ。珍しい‥‥」

　　　　　　　翔、優香を隅に引っ張って行き、

翔　　　　：「おい、まずいよ、優香。啓吾と茉莉、別れたんだよ」

優香　　　：「えええ!?　うそぉ!?」

翔　　　　：「（顔を手で覆う）痛ぁ！」

優香　　　：「（茉莉の様子を伺い）聞いてないわよ、そんなの。だって、相沢さんにだって『啓吾君も来るから』って誘ったのよ。どういうつもりで‥‥」

　　　　　　　茉莉、年配の社員に挨拶。

茉莉　　　：「ご無沙汰しています」

社員　　　：「おはよう、相沢君。頑張ってる様だね」

　　　　　　　彩香、遠目に茉莉を見つめて放心した様子で、

彩香　　　：「きれいなひと‥‥」

■シーン５■　カローラ

　　　　　　　出発準備が整う。

　　　　　　　茉莉、啓吾のカローラの助手席に乗り込む。

　　　　　　　後部座席に男子１、女子２。保養所の資料を見てはしゃいでいる。

茉莉　　　：「久しぶりね」

啓吾　　　：「（やや強ばった声で）あ、ああ。珍しいな、茉莉が参加って（車を発車させる）」

茉莉　　　：「鳴海さんに誘われたのよ。いつも断ってばかりでも悪いでしょう？

　　　　　　　啓吾こそ、どうして、今回は誘ってくれなかったの？」

女子１　　：「（身を乗り出して）土門さん、相沢さん、チョコ食べますかぁ？」

■シーン６■　タウンエース・ノア・フィールドツアラー

　　　　　　　運転席に翔、助手席に優香。

　　　　　　　中央座席と後部座席は向かい合わせて、彩香の他に男子社員２、女子社員２。皆でトランプゲーム

彩香　　　：「（隣の社員にカードを差出す。一枚のカードが取り易く飛び出ている）はい」

男子社員１：「（取り易いカードの隣のを引く）うわっ!?」

女子社員１：「えー、なになに？」

　　　　　　　彩香、一人でそっと後続の啓吾の車を見る。

　　　　　　　助手席の優香、気遣わしげに後部の様子を伺い、

優香　　　：「う～！」

翔　　　　：「（優香の様子を見て）知ーらね、俺」

■シーン７■　東北自動車道

　　　　　　　東北自動車道。翔のタウンエース・ノア、内藤家のスプリンターカリブ、啓吾のカローラが北を目指して走る。

　　　　　　　「宇都宮まで100キロ」の表示。