第4話 コンビネーション(2/14)

■シーン2■ 優香のマンション


       テーブルをはさんで、片側に優香と翔、反対側に啓吾と彩香。


優香   :「それでは、彩香ちゃんの全快を祝して」


       4つのグラスがぶつかる。彩香はジュース。


4人   :「かんぱーい」


       テーブルを囲む4人。


翔    :「でも、よかったよねぇ。直りが早くて」

彩香   : 笑顔

優香   :「若いもん。あ、そのサラダ、彩香ちゃんが作ったのよ」

翔    :「本当? 美味しい、美味しい!」

啓吾   :「(隣の彩香を見やりつつ)お前、怪我が直ったからって無茶するなよ!」

彩香   :「(やや頬をふくらませて)はい‥‥」

翔    :「(二人を見て)啓吾は、随分と彩香ちゃんに態度がでかいんだな?」

啓吾   :「(翔に向かって)こいつは本当に無茶するやつなの!」

優香   :「啓吾君って、ほんと『うるさいお兄ちゃん』ってタイプよね。妹がいたら、きっと大変だったわよ」

翔    :「女兄弟がいないから、珍しくってしようがないんだぜ」

啓吾   :「あのな!」

優香   :「(彩香に顔を寄せ)啓吾君て、会社でも、人の顔をみれば、彩香ちゃんの事ばっかりなのよ」

彩香   :「(不安げに)そおなんですか!?」

優香   :「そうよぉ! やれ、彩香は病院に行ったか、食事はちゃんとしてるか、そればっかり。たまには私の心配もして欲しいわよ!」

啓吾   :「優香ちゃんの心配だってしてるよ」

優香   :「どこが、よ? 終業間際に2ヶ月分の交通費持って来ないでよ!」

彩香   : 啓吾の顔をおかしそうに見る。

翔    :「彩香ちゃん。今度、啓吾がでかい態度取ったら、あかんべしてやっていいからね」

彩香   :「あかんべ、ですか? 練習しておこうかな」


       啓吾、一人肘をつき独白。


啓吾   :「なんか、俺、さんざん‥‥」

優香   :「啓吾君てね、会社じゃこうなのよ‥‥」

翔    :「この間なんかさ、彩香ちゃん‥‥」


       サイドテーブルにパンフレットや手書き資料が広げられる。


優香   :「じゃーん。発表しまーす」


       4人、ダイニングテーブルからリビングのサイドテーブルに移って、


優香   :「(3人を見回して)今度の社内キャンプは、奥日光の川北温泉保養所に決まりでーす」

翔    :「出たな。全社お祭り部」

優香   :「何よう。13倍の難関勝ち取ったんだから誉めて。ここの保養所はね、4月にそれまでの大きな建物を取り壊して、全館バンガロー風の戸建てに直したのね。だから、きちんとした所に泊まれて、それでいてアウトドア気分も味わえるの。どう、啓吾君?」

啓吾   :「うん、いいんじゃない!? いつもテントや車中泊だと来る人が決まっちゃうし」

優香   :「そうなのよ。でね、今回は、特別ゲストに彩香ちゃんをご招待しようと思うんだけれど、どう?」

彩香   :「え? あたしですか? でも、あたし社員でもないし」

翔    :「いいの、いいの。別に正式な会社の行事じゃなくて、優香が勝手にやってるだけだから」

優香   :「何よ、その言い方。でも、本当、そうなのよ。それに、彩香ちゃんはあたしの家族って事にしちゃうから全然平気」

彩香   :「でも‥‥(啓吾を見る)」

啓吾   :「(彩香の視線に気付いて)ん? 何。お前一人で留守番してたってしようがないだろう。来いよ」

彩香   :「(安心して)なら」

翔    :「よし、決定。そしたら、優香、またチラシ作れよ。5月の芦ノ湖の良かったよ」

優香   :「オッケー。明日の午前中に作って、お昼にはメールで流しちゃうわ」

啓吾   :「問題は天気だよな。『海の日』で梅雨明けるかな?」


       彩香、わくわくした表情で三人のやり取りを見つめる。

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