第3話 彩香、絶体絶命(13/13)
■シーン24■ 三軒茶屋、路上
タクシーが止まりドアが開く。
世田谷通りの路肩。少し先に国道246号と首都高速3号渋谷線の高架。国道を車がびゅんびゅん走るのが見える。
世田谷通りも、国道ほどではないが、傍らを頻繁に車が行き交う。
啓吾がタクシーを降りる。続いて降りる彩香に手を貸す。
彩香、啓吾の手を借りつつも車から降りて、自力で路上に立つ。
啓吾と彩香、路上で向き合う。背後でタクシーが走り去る。
啓吾 :「落ち着いたか?」
彩香 :「はい。済みませんでした」
啓吾 :「いいよ」
彩香を促して歩き出す。
二人、世田谷通りを離れて閑静な路地を歩き出す。
「それよりも、あの火竜は、なんのためにお前を追って来たのかな?」
彩香 :「(考え深い様子で)やはり、羽衣だけでは足りないのだと思います。
(立ち止まり、啓吾を見上げて)あたしは、やっぱり啓吾さんにご迷惑をおかけすると思います」
啓吾 :「なんで?」
彩香 :「星の重力に捉えられた火竜が外天界に戻るには、その星の天上と地上の力が必要なんです。そして、火竜が外天界に戻る時には熱擾乱を起こすんです」
啓吾 :「何、熱擾乱って?」
彩香 :「中心に熱気の核を持つ恐ろしく強い暴風です。あたしがこの街にいれば大変な被害になるし、啓吾さんにもご迷惑をおかけします」
啓吾、ちょっと考える。
啓吾 :「なるほど‥‥。で? お前は、あの化け物のエサになりたい訳?」
彩香 :「(信じられない表情で)なりたいだなんて!」
啓吾 :「(少し恐い顔で)なら、余計な気を回すな! お前の身柄は、俺の責任で預かったんだ!」
彩香を促して歩き出す。
彩香、促されつつも、立ち止まり、感に堪えない様子で啓吾を見つめる。
啓吾、歩きかけて、彩香に振り返る。
啓吾 :「どした?」
彩香 :「(啓吾を見つめ、瞳を揺らして)あの‥‥、本当にあたしを守って下さるんですか? あたし‥‥、天女だって事のほかは、どこの誰かも分からないのに」
啓吾、笑みを浮かべる。彩香の髪をクシャクシャとなでる。
腰をかがめ、彩香の顔を覗き込む。
啓吾 :「約束だからな!」
彩香、息を呑んで啓吾を見つめる。瞳が揺れる。
路上に優香
優香 :「啓吾君!」 走り出す。
啓吾 : 腰を伸ばし振り返って、
「優香ちゃん?」
優香 : 二人に走り寄る。
啓吾 :「(驚いて)どうしたの? 仕事は?」
優香 :「啓吾君の様子が普通でなかったから帰って来たのよ。何があったの?」
啓吾 :「ん、うん。一応、もう片付いたんだ」
優香の耳元に顔を寄せて、
「さっきまでひどい興奮状態だったんだ。しばらく聞かないでおいてくれるかな?」
優香 :「分かったわ!」
啓吾 :「そうだ。翔から何か連絡なかった?」
優香 :「あ! あったわよ。あっちもかなり興奮してたみたい。啓吾君から連絡来たら事業所に知らせて欲しいって」
啓吾 :「(舌を鳴らして)そっかぁ‥‥。俺、事業所戻るわ。彩香を頼めるかな?」
優香 :「任せて」
啓吾 : 彩香に振り返って、
「行くけど、大丈夫だな?」
彩香 :「(うなずく)はい」
啓吾 :「(思い出したように)時に、お前、さっき、すごい光を出してたな? あれは、何だ?」
彩香 :「これです」
左手首を啓吾に示す。
『九耀の腕輪』。石は2つ欠けている。
彩香 :「咄嗟だったものだから、『九耀』の石の力を一つ開放させたんです」
腕輪を見つめて、
「また石が一つなくなっちゃった。本当はこんな使い方するものではないんです」
啓吾、彩香の髪をクシャクシャっとなでる。
啓吾 「じゃ、優香ちゃん、悪いけど」
啓吾、走り出す。
彩香 :「啓吾さん!」
啓吾、振り返る。
彩香、左手を胸に当てて啓吾を見つめる。
啓吾、口元に笑みを浮かべ、右手で拳を作って見せる。
啓吾 :「またな!」
走って行く。
見送り続ける彩香。傍らに優香。
第3話 終
【注釈】
*1『無限に広がる大宇宙』
ぁ~あ~あぁぁ、ぁ~あ~あぁぁ
*2『アンドロメダで機械の体をもらって』
と言えば、伝説のあのアニメ! 別れ際にキスなんてされたら、そりゃあ、フェチになっちゃいます。
*3『対ショック対閃光防御』
波動砲、発射10秒前。ターゲットスコープ・オープン! 対ショック対閃光防御。3、2、1、発射!
*4『さよおならぁ』
冥王星軌道を越えて太陽系を離れるヤマトの艦橋から、地球に別れを告げる古代進と沖田艦長!
【追記】
漫画家・松本零士先生が2023年2月に永眠されました。ご冥福をお祈りします。
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