第3話 彩香、絶体絶命(12/13)
火竜、ニヤリと口を歪める。
大口を開けて襲いかかる。
火竜 :「そこまでだ、ドモンケーゴ!」
啓吾、ニッと笑みを浮かべる。腰を沈める。
画面、啓吾の動きに合わせて下にパン。
啓吾、右手で足元から先程の消火器を拾い上げると、振り上げて放り投げる。
画面、消火器の動きを追って水平にパン。
消火器、啓吾の手を離れて、くるくる回りながら宙を飛び、火竜の大口に飛び込む。
火竜、思わず口を閉じる。口の中で消火器が破裂する。牙の間から白い粉が吹き出す。
啓吾、左手で苦もなく木刀を抜くと、左足を踏み込みフェンシングの様な姿勢で木刀を突き出す。
啓吾 :「突きーっ!」
木刀が、飛び掛かって来る火竜の喉輪を突く。
火竜、吹き飛ぶ。口から白い粉が吹き出す。
火竜 :「ゲェオーッホ!!」
背中から店舗の壁に激突する。ショッピングモールの一階天井が崩壊して火竜を埋める。
火竜、瓦礫からかき出る。
火竜 :「ゲホッ、ゲホッ、ゴホッ」
火竜、火炎球を吐こうと構える。
喉の奥が光を放ち、「プスン!」と音がして白い粉を吐く。
火竜 :「ンな!?」
再び、火炎球を吐こうしてして、粉を吐く。
3たび、火炎球を吐こうとして叶わず、
火竜 :「くそっ!」
啓吾に目を向けて、
:「憶えていろ、ドモンケーゴ!」
飛び立つ。
火竜、崩れたモールの亀裂を抜けて飛び去る。
啓吾、木刀を下ろす。
啓吾 : 火竜を見送り、
「ふん、『さよおならぁ』だ」*4
身を翻して駆け出す。
啓吾、彩香に駆け寄る。
彩香の右翼を踏みつけている鉄骨を持ち上げ放り投げる。
彩香、それを呆然と見る。
彩香 :「啓吾さん‥‥。どうして、ここに‥‥?」
啓吾、駆け寄ると彩香の体を両手で抱き起こす。
啓吾 :「この大馬鹿野郎! 俺の心臓を止めるつもりか!?」
彩香 : 脅え顔。
続いて堰を切ったように、
「あたしがやらなくちゃいけないんです! あたしが! あたしが、あの火竜を退治しなくちゃ!」
啓吾 :「(呆れて)何、言ってやがる? (再び勢い込んで)お前に何が出来る!? ペロリと喰われるのが関の山だろう!」
彩香 :「(興奮して)あたしの責任なんです! あたしが、あの火竜を地上に導き入れてしまったんです! だって、そう考えなくっちゃ、説明がつかないもの!」
啓吾 : 彩香の肩を揺すって、
「彩香、聞け!」
彩香、びっくりして啓吾を見る。
啓吾 「お前は、この地上に降りてくる際に、何か恐ろしい目にあったんだ。お前の記憶が戻らないのも、怪我だけでなくそのせいもあるんだ。だけど、それはお前の責任じゃない!」
彩香、半泣き顔で啓吾を見る。目を逸らす。
彩香 :「で、でも‥‥」
啓吾 :「彩香! 俺を見ろ!」
彩香、脅えた顔で啓吾を見る。
啓吾 :「お前のそばには俺がいる。お前が不安な時や苦しい時には必ずいてやる。お前は、たった一人で恐い思いをする必要はないんだ!」
彩香 : 動揺した表情で啓吾を見る。
啓吾 :「(穏やかに)分かったな」
彩香 : 目を逸らそうとする。
啓吾 :「(やや強引に、強い口調で)分かったな!?」
彩香、再び啓吾を見る。怯えた表情。気圧されてうなずく。
啓吾 :「よし」
瓦礫の向こうから人の気配。
人声 :「おおい、こっちだ」
啓吾、人声に気づいて、
啓吾 :「人が来る。関りを知られると面倒だからな。逃げるぞ」
啓吾、彩香の肩を抱いて走り去る。
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