第3話 彩香、絶体絶命(8/13)

■シーン20■  お台場海浜公園


       人混み。

       彩香が駆け込む。


       砂浜を歩く火竜。遠巻きにする人々。


       火竜、波打ち際に立ち止まり、辺りを見回す。

       背後にレインボーブリッジ。


       人混みを前に女性レポーター


レポーター:「私は今、大型鳥の飛来に沸くお台場海浜公園に来ています」


       火竜、砂浜をゆっくりと歩く。


レポーター:「(感心して)大きいですねぇ。肩までで大人の男性の背丈くらい。羽を広げると5メートル位はありそうです」


       レポーター、近くの男性にマイクを向けて


レポーター:「いかがですか、ご覧になって?」

男性   :「いや、大きいですねぇ!」


       マイクを向けられた婦人。


婦人   :「(笑いながら)うちのネコちゃんなんか、食べられちゃいそう」


       レポーター、アップ。


レポーター:「鳥は、食べ物を漁っているのか、先程から砂浜を行ったり来たりしています。ただ、付近にはオゾンの様な匂いが立ち込めていて、せっかくの野生動物が嫌がりはしないかと気になります」


       人混みの中に彩香。


スタジオ :「立花さん、鳥は暴れる様子はないのですか?」

レポーター:「いいえ、鳥はいたっておとなしい性質の様です」


       彩香、アップ。


彩香   :「この火竜。もしかして、あたしがこの世界に引き入れてしまったのではないかしら? あたしが、何かとんでもない事をしちゃったのでは?」


       火竜、正面に顔を向ける。


火竜   :「いたな。ヒヨコ天女!」


       彩香、息を呑む。


レポーター:「(声のみ)何を食べているのでしょう? 少し近づいてみましょう」


       火竜、アップ。


火竜   :「お前を探していたのだ。この地上で唯一の天上人であるお前をな! 今度こそは逃がさん!」


       火竜、人混みに踊りかかる。


レポーター:「きゃーっ!!」


       火竜、レポーターをくわえて放り投げ、人混みをかき分けようとする。

       人々、逃げ惑う。

       火竜、咆哮する。


火竜   :「ギャアアアオゥ!」



■シーン21■  お台場街中


       彩香、走って来ると角を曲がり、ビルの壁に背もたれる。

       激しく波打つ胸を左手で押さえる。


彩香   :「どうしよう。あたし、どうしたらいい? あれがあたしの責任だったら」

       爆音が轟く。彩香、顔を上げる。


       向こうのビルで火の手が上がる。

       彩香、蒼白な顔で胸をおさえたまま息を飲み込む。


彩香   :「何とかしなくちゃ、あたしが!」

       彩香、壁から離れる。カーディガンを脱ぐ。

       キャミソール姿。その肩から白い翼が広がる。

       彩香、一気にビルの上まで舞い上がる。

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