第3話 彩香、絶体絶命(6/13)
■シーン11■ ラーメン店
カウンターに啓吾と翔
翔 :「やったなぁ、啓吾! どうだよ、たまに大きな取り引きまとめた気分は?」
啓吾 :「(上機嫌で)ははは。今日ばかりは何とでも言え」
翔 :「で、この後、どうする? 事務所戻って配送計画まとめる?」
啓吾 :「いや、厚木の配送センターに行こう」
翔 :「FAXでいいんじゃないか?」
啓吾 :「量が多いし急だからな、直接行って説明しよう」
店主 :「へい、お待ち! 塩ラーメン二つね」
翔 :「(割り箸を取りながら)だけど、何だね。お前も、貧血でぶっ倒れてただけでなく、あれこれやっているんだね」
TV :「お昼のニュースです。政府民自党は、国会の空転を受けて三役を招集し対策を協議しています‥‥」
啓吾 :「(上機嫌は崩さず)一々、そこに話を持って行くかよ?」
翔 :「(意味ありげに)んで? どうだったよ?」
啓吾 :「(上機嫌に)何が?」
翔 :「あの晩。泊めたんだろう?」
啓吾 :「(不機嫌になって)だから?」
翔 :「いやぁ‥‥」
啓吾 :「(本気で怒って)おい! 翔!」
翔 :「(あわててなだめにかかる)わ、分かってる! 冗談だよ」
啓吾 :「冗談でも言っていい冗談と悪い冗談とがあるんだよ」
翔 :「分かってる! 啓吾をからかっただけだから! 怒るなって!」
啓吾 : 舌打ち。割り箸を割って食事に取り掛かる。
翔 :「だけどさ。お前、なんであの子を東京に連れて来たんだよ?」
啓吾 :「(難しい顔)ちょっと訳ありでな。いずれ、事情話すよ」
翔 :「事情、ねえ? ところでさ、啓吾?」
啓吾 :「(箸で麺を持ち上げながら)ん?」
翔 :「お前、なんで会社辞めなかったんだよ?」
啓吾 :「!」
ラーメンを食べ損ねる。
顔を上げて翔を見る。
TV :「スポーツの話題です。昨日、デンジャーズの吉本悟外野手が、婚約を発表しました」
翔 :「てっきり啓吾は、伊東から戻ったら会社に辞表を出すんだと、俺は思ってたもんなあ‥‥」
啓吾、嫌そうな顔で、目をそらす。翔を無視してラーメンを喰い出す。
TV :「‥‥お相手の洋子さんは元日航のキャビンアテンダントで、吉本外野手は友人主催のパーティーで知り合ったという事です‥‥」
翔 :「放っとけないよな、そりゃあ‥‥。訳ありだもんなあ」
啓吾、無言。目線を天井に向ける。
TV :「(スーパーに『吉本外野手』)とても可愛らしい方で、とても、放ってはおけませんでした」
翔 :「可愛いし、素直だし。いいなぁ、彩香ちゃん! 俺が食っちまおうっかなぁ?」
啓吾、無視。ズルズルッ! と音を立ててラーメンをすする。
翔 :「だけど、あの子、今、啓吾に幻想抱いているからなぁ。(啓吾に顔を寄せて)今なら、啓吾でも脈あるぜ」
啓吾 : 顔を上げる。翔に顔を向けて、
「あのなあ! 相手、どう見たって十六、七の子供だろう? 俺が何する道理もねえだろ!」
翔 :「おいしーい年頃じゃん?」
啓吾、がっくりと肩を落とす。
啓吾 :「お前さ、大人の責任感ってないの?」
翔 :「大人の?」
啓吾 :「そう!」
翔 :「責任感!?」
啓吾 :「んだよ!!」
翔 :「(力強く)んなものは、ない!(断言)」
啓吾 : がっくりと肩を落として、
「武士道にもとるわ!」
翔 :「なんだ、そりゃ?」
テレビ。ニュースアナウンサー。
TV :「続いて首都圏の話題です。東京都港区のお台場海浜公園で、今朝、珍しい大型の鳥が飛来しているのを付近の人が見つけて話題を呼んでいます」
画面に、火竜が写し出される。
啓吾、テレビを見て、
啓吾 :「火竜‥‥?」
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