第3話 彩香、絶体絶命(5/13)

■シーン7■  『スーパーこぐま』本社重役室


       扉が開く。翔、続いて啓吾が室内に入って来る。


翔    :「失礼します」

啓吾   :「失礼します」


       ソファから小田原店の店主が立ち上がる。


店主   :「いやぁ! やっぱり、あんたか!」

啓吾   :「おやじさん!? その節はどうも!」

店主   : 啓吾の手を握る。

      「いや、世話になったのはこっちだよう。だけど、あんたの名前も聞いてなかったじゃない? そしたら、うちの娘が城址公園であんたを見ていてさ。あんた、法徳学院大学の土門啓吾だろう? どうりで強い訳だよ」

啓吾   : 手を頭の後ろに当てて、

      「いやぁ、おやじさんが警察呼んでくれなかったら、今頃命ないですよ」

店主   :「いや、すごかったよ。あの立ち回りは。そうそう、彼女は元気?」

啓吾   :「はぁ、お陰様で」

重役   :「(咳払い)ごほん! こほん」

翔    :「ま、まぁ、ちょっとな、啓吾、置いといて」

啓吾   :「え? あ!」


       スーパーこぐま重役


重役   :「うぉほん!」


       啓吾と翔、居住まいを正して


啓吾   :「(内ポケットから名刺入れを出し)失礼しました。日山食品の土門啓吾です」

翔    :「(同じく、名刺を出して)吉田翔です」



■シーン8■  有明


       有明総合病院。

       病院から出てくる彩香。


彩香   : 少し疲れた様子で、

       「ふう‥‥!」

       歩き出す。


       街中で立ち止まる彩香。


彩香   :「どうしようかなぁ。お腹空いちゃったけど」


       ハンバーガーショップに気づく。

       前まで来て躊躇する。


彩香   :「ううう。なんか恐そう‥‥」



■シーン9■  彩香、回想


       前夜のカット。


彩香   :「ち、ちょっとくらいの第3物質は平気ですぅ!」

啓吾   :「そうなの?」



■シーン10■  再び有明


       彩香、ハンバーガーショップの前で、なおしばし逡巡ののち、


彩香   :「ううっ! 勇気! 根性! 度胸っ!」

       大股で、店に入って行く。


       店の中。彩香、カウンターからトレイを受け取り、隅の椅子に着く。

       女子高生の一群、しゃべりながら店に入ってくる。

       彩香。食べながら気付いて顔を起こす。

       遠景にカウンターに並ぶ女子高生、近景に見つめる彩香。


彩香   :「あっ。あの子達、同い年くらいかなぁ‥‥」


       高校生達、トレイを持って彩香の前を通り過ぎる。


彩香   :「きっと、学問所の帰りなのね。制服が可愛くっていいなぁ‥‥」


       席に着いた女子高生達


女子高生A:「もう!! 超ムカツク! 世界史のムラオカ!」

女子高生B:「ギャハハ! 超ダッセー!」

女子高生C:「てゆうかぁ!」


彩香   : 目を丸くして、

      「女の子、よね?」


       しゃべり続ける女子高生と見つめる彩香。


彩香   :「あたし、何者なんだろう? どうして自分の事だけ思い出せないんだろう。他の事だったら何だって憶えているのに」


       女子高生達、はしゃぎ続ける。

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