第3話 彩香、絶体絶命(4/13)

■シーン5■  日山食品第2事業所


       朝、玄関口で。


社員A  :「おはよう」

社員B  :「おはようございます」


       室内、給湯室前に複数の女子社員


女子社員A:「(小声で)きゃー、土門さんよ」


       部屋に入って来た啓吾


啓吾   :「(当惑し)な、なんだ!?」


       壁際、複数の男子社員


男子社員A:「おい、土門だぜ」

男子社員B:「おお!」


       啓吾


啓吾   :「(恐れをなしつつ)な、何なんだよ」

       机に鞄を置き、上着を脱ぎ、椅子に座る。脇から茶碗が伸びてくる。

声    :「はい。土門君、お茶」

啓吾   :「ああ、ありがとう、って、え!?(相手を見やる)」


       井上響子課長、啓吾の視点から仰観。井上、艶然と微笑む。


啓吾   :「い、井上課長!!」


       井上課長、啓吾の机に寄り掛かりつつ


井上   :「聞いたわよぉ。人命救助。津波の中から女の子を救出ですって?」

啓吾   :「課長、そりゃ、噂に尾ひれって奴ですよ」

井上   :「あらぁ、新聞にだって、一面トップで出てるわよ」

啓吾   :「どこの新聞が、そんなデマ」


       社内新聞。一面トップにデカデカと啓吾の名。

       大見出しに「奇跡の人命救助」

       中見出しに「津波の中から少女を救出」

       小見出しに「不死身の体、東京第2事業所所属 土門啓吾さん」

       彩香の写真、説明文に「美少女の彩香ちゃん」


啓吾   :「げげっ!!」


       啓吾と井上


啓吾   :「(頭を抱えて)優香ちゃんだなぁ‥‥」

井上   :「さすが、鍛えぬかれた肉体よね。ね、今度見せて!」」

啓吾   :「(井上に顔を向け)何をです?」

井上   :「あなたのカ・ラ・ダ」

啓吾   :「(ゲンナリと)課長、そりゃセクハラですって」


       山田所長、所長席から立ちつつ、


山田   :「おおい! 土門!」

啓吾   :「はい、山田所長」

山田   :「お前、今すぐに『スーパーこぐま』に行って来い! 納入を倍にする契約を取って来い!」

啓吾   :「はっ?」

山田   :「土門一人じゃ頼りにならんな。おおい! 吉田!」

翔    :「はぁい!」

山田   :「お前も一緒に行って来い」

翔    :「はい」


       啓吾と翔、部屋を出る。


啓吾   :「(歩きながら上着を着つつ)何なんだ? 何なんだ!」

翔    :「お前、この間の帰りの車で言ってたろう? 小田原の『スーパーこぐま』に厚木の余剰在庫を回せって。あれをやったら、先方が偉く喜んでな。取り引きを倍にしてもいい、とにかく、まずはお前に会いたい、って言って来たんだよ」

       いきなり、啓吾に振り向き、

      「お前な!!」

啓吾   :「(不意の剣幕に押されて)な、何だよ?」

翔    :「(クルッと背を向け)名刺くらい置いて来い!」

啓吾   :「(苦笑)いいじゃん、別に!」



■シーン6■  ゆりかもめ


       新橋駅。ゆりかもめがホームに入って来る。

       彩香、人ごみに押されながら列車に乗り込む。

       彩香、頭に包帯、ギブスをして吊った右腕。

       服装は、水色のキャミソール。綿の膝丈スカート、紺のカーディガン。

       カーディガンは、左袖だけ通して、右肩は羽織ってギブスで吊った腕を覆っている。


       ゆりかもめ車内。窓際の座席に彩香。

       窓からの景色、左手前方にレインボーブリッジが見えてくる。

       彩香、窓に顔を押しつける。

       芝浦のループを登り、レインボーブリッジが前方に迫る。

       その先、右手に、お台場の街並み。テレビ局のビル。

       橋の左手には、有明の街。有明総合病院の建物。

       彩香、ほのかに口を開けて、景色を見つめている。

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