第2話 羽衣と九耀と約束(10/11)

■シーン17■ 再び海岸


       海岸、全壊した家屋の残骸の中、啓吾が腕輪を捜している。

       啓吾、建材を持ち上げては放り投げる。

       波の音。建材が転がる音。


       彩香、啓吾の作業を見つめている。不安げな面持ち。

       彩香、紺のキャミソールに紺のコットンパンツ、スニーカー、右腕は三角巾で吊り、男物の白い綿シャツを左腕だけ袖を通して羽織って立っている。


       瓦礫の中の啓吾、手にした腕輪を高く掲げて見せる。

啓吾   :「あったよ」


       彩香、安堵の表情が浮かぶ。


       啓吾、瓦礫の中から歩きつつ腕輪の泥を払い、瓦礫から出ると小走り。腕輪を示して、


啓吾   :「これだろう?」


       彩香、嬉しそうにうなずく。

       啓吾、彩香の左手を取り腕輪をはめる。

       啓吾、改めて彩香の左手を見る。


       九耀の腕輪、アップ。石が一つ欠けている。


啓吾   :「石が一つ欠けてるなぁ。落ちたのかな?」


       啓吾、もう一度瓦礫の中に戻って行こうとする。


彩香   :「啓吾さん!」


       啓吾、振り返る。とまどった表情。


       彩香、綿シャツを脱ぎキャミソール姿。啓吾を見つめている。


       啓吾、いぶかしむ。腰を伸ばし、上体を起こし、


啓吾   :「彩香‥‥、ちゃん?」


彩香   : まっすぐに啓吾を見つめて、

      「啓吾さんも、あたしの事を信じていないんですね?」


啓吾   :「えっ!?」


彩香   :「あたしは、羽衣がなくたって、この『九耀の腕輪』があれば天上に帰る事が出来るんです」

       『九耀』を胸の前に構える。


       『九耀』のアップ。光を放ち「帝釈」の文字が浮かぶ。

       ズームアウト。彩香、全身。光に包まれる。


       彩香、全周。肩から真っ白な翼が広がる。


       啓吾、唖然として見つめる。顔が光に照らされている。


       彩香の左翼、風切り羽根がピンと伸びる。

       彩香の右翼、大きく打ち降ろされる。

       彩香、全身。大きく羽ばたく。

       不意に光が消え、翼が消滅する。

       彩香の上体が大きく傾ぐ。


啓吾   : はっとして、

      「彩香っ!」

       駆け出す。

       倒れる彩香を抱き留める。

     :「分かった! 信じる! だから、無茶はするな!」


       彩香、啓吾の腕の中で、苦しそうに息を荒げる。


啓吾   :「俺が守ってやるから!」

       彩香の上体を起こし顔を見つめて。

      「火竜だろうが化け物だろうが、守ってやるから! だから、無茶はするな!」


       彩香、驚いた表情で啓吾を見る。

       啓吾、彩香を見つめる。

       彩香、驚き顔から、戸惑い顔。ゆっくりと安堵の表情を浮かべる。

       啓吾、笑みを浮かべる。ふと、表情が消える。


■シーン18■ 啓吾の回想


       第1話、伊東。啓吾と和子、並んで歩く。


和子   :「伊東へは、いつ帰って来てもいいんだからね」



■シーン19■ 再び海岸


       啓吾、「しまった!」と言う表情で天を仰ぐ。


       彩香、怪訝な表情を浮かべる。


       啓吾、しばらく天を仰いで呆けている。


       彩香、もの問う様な表情。


       啓吾、「やっちゃった!」という表情、口の動き。

       やがて苦笑。

       思い直した様に視線を下ろして彩香を見る。

       彩香の背中をトントンと軽くたたく。

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