第2話 羽衣と九耀と約束(11/11)

■シーン20■ 東京へ


       発進するタウンエース・ノア・フィールドツアラー、正面から。

       画面は、運転台を通り抜け、3列シートの中部座席の彩香にズームイン。

       彩香、前シーンと同じ服装で、さらに毛布を羽織っている。もの珍しげに車内を見回す。

       その奥には、シートをたたんで啓吾のバイクが載せてある。


       運転席に翔。助手席に啓吾。


翔    :「(声をひそめて)おい! どうするんだよ?」

啓吾   :「(やはり、声をひそめて)仕様がないだろう! 放っとく訳にも行かないんだから」

翔    :「茉莉には何て説明するんだよ?」

啓吾   :「(渋面)茉莉とは、この間別れたんだよ」

翔    :「(大袈裟に、嬉しげに)ほっほおう!」


       タウンエース・ノア、急停車する。


翔    : 後部座席を振り返って、

      「彩香ちゃんだっけか!?」

彩香   : ニコニコして、

      「はい!」

翔    : 手を差し出し、

      「俺は吉田翔。啓吾とは大学からのダチなんだ。よろしく」

彩香   : 笑顔で翔の手を握り、

      「はい。よろしくお願いします」


       再び走り出すタウンエース・ノア・フィールドツアラー。


翔    : 後部に注意を向けつつ、

      「彩香ちゃん、東京は初めて?」

彩香   : 満面の笑顔で、

      「はい。‥‥多分」

翔    :「お兄さんがあちこち案内してあげるよ。ディズニーランドとか行ってみたいでしょう?」

彩香   : こぼれるばかりの笑みで、

      「はい! 是非!」

啓吾   :「(ややあわてて)おまっ! (慌てて声を落として)お前こそ優香ちゃんがいるだろう!? 何、こんな所でナンパしてんだよ!?」

翔    : 満面の笑みを助手席に突き出し、

      「俺はね、」

       視線を前に戻し、

      「大学の時から茉莉一筋で、他の子が目に入らなくて、5年間つきまとった挙げ句に振られちまうどっかの誰かとは違うの!」

       再び、啓吾にニッと笑って、

      「出会いのチャンスは生かさなくちゃね」

啓吾   :「(逆上気味)振られたって、お前な!?」

翔    : 助手席に顔を突き出し、ダメ押しに、

      「振られたんだろう?」


       啓吾、絶句。しばし口をパクつかせて反論しようとするが、言葉が出ず。

       視線を逸らして窓枠に肘をつき、


啓吾   : 「ふん! 勝手にしやがれ」


       走り去るタウンエース・ノア・フィールドツアラー、後方から俯瞰。

       道路標識に「東京まで60km」の表示。



第2話 終



【注釈】

*1『ゴジラ』

 ご存じ、日本が世界に誇るキング・オブ・モンスター!

 ちなみに、『平成VSシリーズ』は、1995年12月公開の『ゴジラVSデストロイア』で一旦終了。この小説の舞台である1998年には、こちらも仮面ライダー同様、「過去のシリーズ」だったのです。東宝の次作は、1999年12月公開の『ゴジラ2000 ミレニアム』になります。

 ただし、1998年5月、つまり、この作品のちょうど第2話の頃、ハリウッド映画『GODZILLA』が公開されています。「マグロを食ってる様なやつ!」、スクリーンに初登場!!

*2『ズン、という物音と共に家屋が揺れる』

 シーン10は、ハリウッド版『GODZILLA』の、劇場版予告編のパロディです。

 分かるかなあ!?

*3『口許が光を放つ。火炎を吐く』

 シーン12冒頭部分は、『平成VSシリーズ』最終作『ゴジラVSデストロイア』で、ヒロイン(演:石野陽子)が幼体デストロイアに襲われるシーンのパロディ。

 「*2」よりも、さらに苦しい!!

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