第2話 羽衣と九耀と約束(8/11)

       家屋の瓦礫。彩香が這い出て来る。


       彩香、アップ。驚いた表情。


彩香   :「啓吾さん!?」


       遠景に火竜と啓吾


       彩香、アップ。叫ぶ。


彩香   :「啓吾さん! 逃げて!」


       火竜、火炎球を吐く。


       着弾し、爆風に吹き飛ばされる啓吾。

       啓吾、落下と共にそこに落ちていた鉄パイプを再び握る。

       啓吾、砂地を転がり、その勢いで立ち上がり、鉄パイプを青眼に構える。


       火竜、ひるむ。


       啓吾、いぶかしむ。

       火竜の様子を伺う。


啓吾   :「こいつ‥‥、もしかして片目か?」


       火竜、アップ。左目に折れた矢が刺さっている。


啓吾   :「ならばっ!」

       構えを変える。両手を右肩の脇まで上げ、鉄パイプの先端を前に向けて水平に、「コナン・ザ・グレート」のシュワルツネッガーの様な構えを取る。

       咆哮する。

      「うりゃあああああ!」


火竜   : 咆哮。

      「ギャアアア!」


啓吾   : 構えを保ったまま突進する。

      「でやああああ!」


       火竜、残った右目で啓吾の動きを捕えようとする。

       まっすぐに距離を詰めて来る啓吾に、イラつきを浮かべる。

       火炎球を吐く。


       走る啓吾の後方に、前方に火柱が上がる。

       爆炎の中から踊り出る啓吾、鉄パイプを突き出す。

       鉄パイプの先端が火竜の下あごを突く。


火竜   :「ゲッ!」


       啓吾、鉄パイプを引き戻し、さらに突き出す。


啓吾   :「突きーっ!!」


       鉄パイプが火竜の喉元を狙う。

       火竜、身を引きつつ二撃目をかわし、闇雲に右腕を振り降ろす。


火竜   :「ガアア!」


       啓吾、上体をのけぞらせて火竜の爪を避け、振りかぶった鉄パイプでその右手首を打ちすえる。


啓吾   :「小手っ!!」

火竜   :「(悲鳴)ギャッ!」


       火竜、あわてて右腕を引き上体を起こす。

       画面は、がら空きになった火竜の腹部をズームアップ。


       啓吾、目元のアップからズームアウトして顔全体。

       背景、流れる。


啓吾   :「(絶叫)胴おおおおっっ!!」


       鉄パイプが火竜の腹部を打ちすえる。

       立ち尽くす火竜。その脇を走り抜ける啓吾。

       啓吾、立ち止まり振り返ると、中段に構えて残心。

       火竜、あごを上げたまま身動きせず。


火竜   :「グエ‥‥」


       堤防の上に2人の警官が現れる。


警官   :「あそこだ!」


       警官、ピストルを構えて発砲する。

       銃弾が火竜をかすめる。


火竜   : 振り返り、

      「(いまいましげに)地上人の飛び道具か」


       火竜、翼を広げて飛び上がる。

       海に飛び込む。

       しぶきを上げて姿を消す。


       啓吾、なおしばらく中段の構え。火竜を追って体の向きを変える。


       海面。しばらく泡立つが、次第に静まる。


       啓吾、大きくゆっくり息を継ぐと、身を翻して駆け出す。


啓吾   :「彩香!」


       倒壊した家屋の前。啓吾と警官が駆け寄る。

       啓吾、鉄パイプを放り、彩香を抱き起こす。


啓吾   :「大丈夫か?」

彩香   : 啓吾の腕の中で、呆れた口調で、

      「あなたって、どういう人!? 信じらん‥‥ない」

       気絶する。

啓吾   :「おい? 彩香ちゃん! おい!?」

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