第2話 羽衣と九耀と約束(6/11)

■シーン11■ 海岸


       海岸近くの海面が泡立ち、火竜が姿を現す。


       砂浜に火竜の足。ズン、と足音。水飛沫が砂地に散る。


       家屋の中。ズン、という物音と共に家屋が揺れる。*2


       彩香、寝顔。顔に土くれが落ちる。

       彩香、眉を動かす。

       目を開く。


       彩香、上体を跳ね起こす。


彩香   :「(小さく叫ぶ)この臭い!!」

       おびえ焦った表情。

      「この臭い、あたし知ってる。でも、何だろう。思い出せない」


       ズン、と地響き、土くれがバラバラと落ちる。


       家屋内部全景。ズン、と大きく地響き。彩香、顔を正面に向ける。

       その目の前に、建材が崩れ、火竜の片足が突っ込んでくる。

       彩香、叫び声を上げそうになり、危うく呑み込む。


       彩香、枕許に左手をつく。その拍子に、そこにあった『九耀の腕輪』が転げ落ちる。


       家屋内部全景。火竜の足が抜けて行く。


       天井に開いた穴から、火竜の尻尾が宙を切るのが見える。


       彩香、息を抜き胸をなでおろす。周囲を見まわす。

       一人な事に気付き青ざめる。


彩香   :「え? 一人?」


       ふっと顔を上げる。表情が強ばる。


       天井の穴から火竜の顔。火竜、笑う様に口を開く。


彩香   :「(絶叫)キャーーッ!!」



■シーン12■ スーパーこぐま


啓吾   :「(軽口口調)商売やめたら暴動になるか?」

店主   :「(笑いながら)まさか、外国じゃあるまいに。でも、普段通りがあると安心だろう?」

啓吾   :「食料品なんかは入って来てるの?」

店主   :「いや。行政の救援物資は入っているらしいが、流通はまだだね。炊き出しにも供出しちゃったし、明日は売り物ないね」

啓吾   :「『日山食品』のでよけりゃ融通つくけど」

店主   :「本当かい!? そいつは助かるな」


       店の外で、

女の声  :「キャーッ! 何あれぇ!?」


       啓吾、品物をレジに残して表に飛び出す。


       海岸遠景。火竜の姿。


啓吾   :「(店内に向かって)おやじさん! 警察呼んで!」


       啓吾、バイクに飛び乗り、走り出す。

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