第1話 夏の始まり(11/11)
■シーン18■ 引き続き、砂浜
砂の上に倒れた啓吾。波の音。
啓吾の回りに、砂を踏んで集まって来る天女達。
風花、雫、梢。画面を取り囲む様に啓吾の様子を覗き込んで、
梢 : 「大変。この人、死んでしもた」
雫 : 「馬鹿な事言ってないで。気絶しているだけでしょう?」
風花 : もっともだと言う様にうなずく。
雫、髪をかき上げて右耳に指を当てる。イヤリングの一つをはずし、リング部分を取る。イヤリングが小瓶になっている。
イヤリング状の小瓶から液滴が垂れる。
液滴から輝点が広がり『九耀』の文様を描き出す。
液滴が啓吾の口の中に消える。
啓吾、息を吹き替えし、顔をしかめて横を向く。
啓吾 : 「うっ!」
風花、雫、梢。
梢 : 「生きかえらはった!」
雫 : 「(立ち上がりつつ)さあ、急いで天上界へ戻りましょう」
風花 : 「待って、雫。」
遠くを見やり、
「あのままじゃ、彩香がかわいそうよ」
火竜のいた松の倒木の周囲。3人の天女が立つ。
辺りに白い羽根が散らばっている。
梢 : 驚いた表情で息を飲む。
「これ、もしかして彩香の!?」
雫 : 言葉も出ない。
風花、進み出て羽根を拾い集める。
雫、梢もそれにならう。
途方に暮れる風花。ため息をつく。雫が近づいて来るのに気づき立ち上がる。
雫 : 「(自分の集めた羽根を風花に渡して)さあ。もう暗くもなるし、彩香の事も吉祥天女様に御報告せねば」
風花 : うなずき、「梢は?」
雫 : 「え?」
辺りを見回す。
梢、遠景。啓吾の脇にしゃがみ込んでいる。
雫 : 「梢ー。何してるの?」
梢 : 「(振り返り)え!?」
梢、アップ。目を輝かして
梢 : 「この人! えーえ男やわあ!」
風花と雫、両脇から梢の腕をムンズと取る。
梢、まん丸目玉。
そのまま、舞い上がる。
夕焼け空。飛び去って行く三人の天女。
雫 : 「梢の悪趣味!」
梢 : 「どおしてえ!? 『藤岡弘』に似てるやない?」*4
雫 : 「それって誰よ!?」
海岸。啓吾が倒れている。
波の音。
啓吾、アップ。表情が動く。
啓吾 : 「うっ! いて!」
体を返し、うつぶせになり、腰に手を当てながら立ち上がろうとする。
「痛ってぇ‥‥。俺、何をしてたっけ!?」
腕を砂地についたまま、しばらく一休み。息をついて立ち上がる。
啓吾、腰を押さえながら、彩香を寝かした家屋まで戻る。
啓吾 : 「いてて‥‥。いー」
腰をかがめて、中を覗く。
■シーン19■ 倒壊家屋
部屋の中に立つ彩香。驚き顔。体は毛布で包んでいる。
啓吾 : 「(驚いて)きみ!!」
彩香、アップ。
彩香 : 「(用心深い様子で)だ・れ?」
はっとした様子で表情を変え、左手首の『九耀の腕輪』(石が1つ欠けている)を構える。
啓吾 : 「(ナレーション)それが俺と彩香の出会い、そして、そのさんざんな夏の始まりだった」
第1話 終
【注釈】
*1 『ゴー、ゴー、レッツゴー』
言わずと知れた、『仮面ライダー』オープニングソングの一節、歌うは主演・藤岡弘です(途中から子門真人)。
*2 本郷猛
仮面ライダー本郷猛は改造人間である。彼を改造したショッカーは、世界征服とたくらむ悪の秘密結社である。
改造人間であった本郷猛は、変身せずとも怪力で、部厚い電話帳を素手で破るなどのエピソードがありました。
*3 ストラップに仮面ライダーのマスコット
この頃は、まだ、スマホは登場しておらず、モバイル通信のツールは、もっぱら携帯電話でした。
携帯電話の時代には、電話機に色々なストラップをぶら下げるのが流行りました。
ちなみに、この物語の舞台である1998年、『仮面ライダー』はテレビで放送されていません。
平成シリーズ『仮面ライダークウガ』がオンエアされるのはこの2年後で、当時、「仮面ライダー」は過去のテレビシリーズだったのです。
ストラップ、どこで手に入れたんだろう?
*4 藤岡弘
言わずもがな、スーパーヒーロー本郷猛を演じたのは、この人。
我らが主人公、土門圭吾、果たして似てるのかなあ‥‥?
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