第1話 夏の始まり(9/11)

■シーン17■ 砂浜


       再び屋外。バイクの脇に立つ啓吾。ヘルメットを手に取る。


       啓吾、不意に不快な表情、


啓吾   : 「何だ、この臭い?」


       啓吾、バイクの脇に立って、


啓吾   : 「オゾンだ‥‥」

       顔をしかめて振り返り、しばらく海岸を眺める。


       火竜、後ろ姿。

       松の倒木の間に首を突っ込んでいる。


       啓吾、バイクの脇に立って、


啓吾   : 「なんだ、ありゃ!?」

       歩き出す。


       近景に火竜。クチャクチャと音を立てながら口を動かす。

       遠景に様子をうかがう啓吾。


       啓吾、アップ。怪訝な表情。


啓吾   : 「松? ‥‥じゃない。あの子の着ていた羽毛の服を食っていやがる」


       火竜、羽衣の切れ端を口にくわえて振り返る。

       啓吾に向かって口を開く。


火竜   : 「地上の生き物か?」


       啓吾、驚き顔


啓吾   : 「しゃべりやがった!」


       火竜。


火竜   : 「俺は運がいい。天女のお陰でこの星の力を得る事が出来た。だが、羽衣だけでは食い足りん。お前を‥‥」

       啓吾に襲いかかる。

     : 「食わせろ!」


       啓吾、あわてて、横飛びに飛びのく。


啓吾   : 「うわっ!?」


       啓吾、砂を蹴立てて着地する。


啓吾   : 「な、何なんだよ、お前、一体!?」


       火竜、問答無用とばかりに大口を開けて襲って来る。


火竜   : 「グワアアアア!」


       啓吾、焦る。


啓吾   : 「うわっ!?」


       乾いた音をたてて、火竜と啓吾の間に弾幕が張られる。


       火竜と啓吾、共に空を見上げて、


火竜   : 「ぐわっ!?」

啓吾   : 「今度は何だよ!?」


       雲間から、3つの光点が急降下して来る。


       逆さ落ちに急降下する風花、雫、梢。


風花   : 「雫! 梢! 引きつけて!」


       天女、二手に散開する。


       雫、梢。『九耀』の光弾を撃ち出す。


       火竜の体を純白の羽根が包み、光弾をはじき返す。純白の羽根はすぐに消える。


火竜   : 「(咆哮する)ギャアアア!」


       空中で静止する雫と梢。


雫    : 「今の何!?」

梢    : 「効かへんがな!」


       風花、啓吾を後ろから抱えて持ち上げ、


風花   : 「下がってて!」

啓吾   : 「(驚き顔)おわっ!?」


       遠景に啓吾、砂地に投げ出され茫然自失の様。

       風花、その手前に着地し弓を構える。


       風花、矢を番え、弦を引きかけて周囲に目をやる。


風花   : 「えっ!?」


       風花、俯瞰。周囲の地面に白い羽根が散らばっている。


風花   : 「これは!?」


       風花、顔を上げて、


風花   : 「火竜、まさか!?」


       火竜、全身を画面いっぱい。


火竜   : 「そうとも、俺が食ってやった!」


       雫、梢。驚愕する。


雫、梢  : 「火竜がしゃべった!?」


       火竜


火竜   : 「お陰で俺は天上の力を手に入れたのだ。天女の九耀の光弾など、もはや痛くもないわ! 食らえ!」

       火炎球を吐く。


       火炎球が砂地に着弾する。風花、爆風に吹き飛ばされる。


風花   : 「きゃあっ!!」


       雫、梢。急いで降下する。


雫    : 「風花!」


       火竜の尾が空を切り、梢をかする。梢、弾き飛ばされる。


梢    : 「きゃっ!」

雫    : 「梢!」


       砂地に叩きつけられる梢。


梢    : 「あん!」


       雫、砂地に舞い降りる。


雫    : 「梢!」

       梢を助け起こす。


       火竜の大口が襲いかかる。


火竜   : 「ギャアアアアア!」


       振り返る雫と梢。恐怖し抱き合って、


二人   : 「きゃああー!」


       火竜の横っ面をボートのオールが打ち据える。


火竜   : 「ギャッ!!」


       砂地に立つ火竜。顔を上げて、


火竜   : 「ガア!」

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