第1話 夏の始まり(6/11)

■シーン9■ 小田原


       小田原市街を上空より俯瞰、高波が堤防を越えて市街を襲う。


       小田原市街、海水が通行人、車を飲み込む。


       小田原市街、建物が崩壊する。


       小田原城、石垣にぶつかる波。


       小田原市街、海水が酒匂川を遡上し鉄道橋を破壊する。


       石垣にぶつかった波が引いて行く。


       崩れた建物を海水が洗っていく。


       水底から、ひっくり返った自動車などが姿を現す。

       つぶれた建物の窓から水が流れ出る。


       小田原市街を上空より俯瞰、海水が引いていく。サイレンが鳴り渡る。



■シーン10■ 小田原、路上


       バイクのハンドルからぶら下がる携帯ラジオ。


ラジオ  : 「津波関連のニュースを続けてお伝えします。今日昼頃、相模湾に発生した津波により、小田原、真鶴方面には大きな被害が出ています」


       手前にラジオとバイク。その向こうに倒壊した家屋の前に男達。


ラジオ  : 「気象庁の発表によりますと、津波発生時刻に地震は観測されておらず、隕石などの落下による可能性もあるとして調査を進めております」


消防団員 : 「クレーンを早く! クレーンを!」

男    : 「誰かー! 娘を早く! 誰かー!」


       人ごみの中から啓吾が走り出す。

       人を掻き分けて瓦礫の下に潜り込む。


消防団員 : 「おい、君!」

啓吾   : 「(大声で)持ち上げます!」


       啓吾、瓦礫の下に潜り込む。

       瓦礫に肩を当て、力をこめる。肩の筋肉が盛り上がる。

       瓦礫が持ち上がる(啓吾の膂力を強調)。

       人々が走り出て手を貸す。


人々   : 「せいのー!」

団員   : 「頑張れ! 今、助けるぞ」


       消防団員が、瓦礫の下から男の妻と子供を救い出す。


娘    : 「パパーッ!」

男    : 「圭子! 道子!」 妻女と娘を抱きしめる。


       啓吾、単独アップ。手の甲で額を拭う。


啓吾   : 「(ナレーション)そう言えば、頼まれもしないのに調子に乗って、街の人の救助活動を手伝ったりしたのも、‥‥あとで思えば不運の始まりだった」


       数人の男達と出掛ける啓吾。

      「芦の湖キャンプ場」Tシャツの上に、消防団のジャケットを着込む。


女の声  : 「浜町へ十人程お願いします!」


       水につかった建物をクレーンが持ち上げる。


       ふいにうづくまる啓吾。画面に背を向け嘔吐する。


啓吾   : 「おえええ!!」

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