第1話 夏の始まり(5/11)

       風花ら、


風花   : 「(叫ぶ)みんな! 『九耀』を!」


       3人の天女、左腕を構える。手首に『九耀の腕輪』。


       3人の『九耀の腕輪』、光を放ち、それぞれに「風」、「水」、「草」の文字が浮かぶ。

       光弾を撃ち出す。「パン! パ、パン!」と、乾いた音が響く。


       3発の光弾が火竜を襲う。1発が火竜の肩口、黒い硬質部分に当たる。火竜、ビクリと全身を波打つ。


火竜   : 「ギャウ!」

       顔を横に向ける。

      「ガアァ!」

       大口を開ける。口許が光を放つ。

       衝撃音と共に火炎球を発射する。


       火炎球が路面に着弾し炸裂する。風花ら、翼を開き、散り散りになって舞い上がる。


三人   : 「キャーッ!」


       火竜、尾を高々と振り回す。


火竜   : 「ガウ!」


       火竜の尾が、雫と梢を蹴散らす。


雫    : 「きゃっ!」


       風花、水平に飛びながら、左手を上げ、『九耀』の光弾を撃ち出す。


風花   : 「ええいっ!」


       火竜、光弾をかわし再び火炎球を吐き出す。

       風花の背後の高楼に火炎球が当たって爆発する。爆圧が風花を襲う。


風花   : 「きゃーっ!」


       街路に投げ出されバウンドする風花。

       雫、風花の許に舞い降りる。


雫    : 「風花!」


       火竜の体の下。彩香、うつぶせに倒れ、両手で頭を抱えている。


彩香   : 「う、う‥‥。みんなが」


       彩香、身を翻して仰向けになる。左手を上げ『九耀の腕輪』を構える。


彩香   : 「帝釈天の『九曜の腕輪』、みんなを守って!」


       彩香の『九耀の腕輪』、アップ。中心の石が光を放ち「帝釈」の文字が浮かぶ。周囲の八つの石から七色の光彩が周囲に広がる。

       彩香、『九耀』の光弾を撃ち出す。「ダン!」と重みのある発射音。

       彩香のすぐ真上で、光弾が火竜の胸に命中する。


火竜   : 「ギャッ!」


       火竜、下から仰観。胸に光弾を受けて上体が跳ね上がる。そうして、今度は体が徐々に倒れる。


       彩香、恐怖に表情が歪む。火竜の陰が彩香を覆う。


彩香   : 「あっ! いやあー!」


       火竜、地響きをたてて倒れる。

       彩香が持っていた無線機が宙に放り出される。


       無線機が地面に落ちて壊れ、破片が飛ぶ。


       路上に風花と雫。


風花   : 「彩香!(起き上がり飛び出そうとする)」

雫    : 「風花!(風花を引き止めて)」


       火竜の後足が無線機を踏みつける。無線機が粉々になって飛び散る。

       火竜、後足を突っ張る。爪が地面をえぐり、地面に亀裂が走る。


       路上に風花、雫、梢。


梢    : 「地面が裂けとう!!」


       火竜、頭を地面につけ、首で体を支えて起き上がろうとする。

       更に前足の肘をつき、苦し紛れの様に、火炎を吐き出す。

       地面が裂け、土塊が飛び散る。

       不意に、火竜の体がガクンと下がる。


       西宮門全景。火竜を中心に地面に亀裂が走る。

       火竜は、その地割れに挟まって咆哮する。


火竜   : 「ギャアアア!」


       風花、雫、梢。愕然とする。


風花   : 「西宮門が!」


       西宮門全景。門全体が崩れ、地面が陥落し始める。


       第4天上界を水平方向から望む。

       西宮門を含む地面の端が崩れて下界へ落下する。


       風花、雫、梢。無数の岩くずが降りかかる。

       三人、小手をかざす。


雫    : 「(身を乗り出し)風花! あそこ!」

風花   : 「ええっ!?」


       崩れた地面のかどに白い手が二つ。


       断崖にぶら下がる彩香、俯瞰。


風花   : 「彩香!」


       風花、雫、梢。走り出すと同時に翼を開く。


風花   : 「彩香、飛んで!」


       彩香、俯瞰。ぶら下がったまま両肩から翼を広げる。

       彩香、自分の左脇を見て、


彩香   : 「はっ! 羽衣が破れてる!?」


       彩香の背後から再び火竜が上がって来て、彩香が掴んでいる岩角に爪をかける。

       地面が再び崩れる。


彩香   : 「きゃあ!」


       風花、急降下する。


風花   : 「彩香!!」


       彩香、火竜と岩塊に挟まれて、身動きが取れないままで落下していく。


彩香   : 「風花ぁ~!」

       吸い込まれる様に小さくなる。


       風花、雫、梢。なす術もなく、


風花   : 「彩香ーっ!」


       画面は、彩香らを追って降下するも、彩香と火竜は見る間に小さな点になって雲間に消えて行く。

       雲が左右に流れ、海、そして日本列島が見えて来る。

       画面は、西湘方面に向けてズームアップしていく。



■シーン8■ 真鶴道路

*シーン8-1* 相模湾を望む


       大音響と共に、海面に巨大な水柱が立つ



*シーン8-2* 道路


       啓吾、よろめきながらバイクを止める


啓吾   : 「(ヘルメットのバイザーを開き)な、何だァ!?」



*シーン8-3* 相模湾


       巨大な水柱が次第に崩れ、代わって大波が迫って来る。



*シーン8-4* 道路


       啓吾、あわててバイクのハンドルを切り


啓吾   : 「うそだろう!?」


       逃げる啓吾。その後方から大波が襲い掛かる。

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