第1話 夏の始まり(4/11)

■シーン7■ 第4天上界西宮門


       西宮門を仰ぐ。その前に風花、雫、梢。

       風が門に当たる度に地響きの様な音を立てる。


梢    : 「えらい風や! 地面が揺れとうみたい」

風花   : 「観測所は門を出てすぐよ。今、潜戸を開けてもらうから」


       風花、門脇の門番部屋を覗く。


風花   : 「すみません! どなたか?(開け放しの扉の桟を拳で叩く)どなたか!?」

雫    : 「(風花の後ろから覗き込み)どうしたの?」

風花   :  振り返る。

雫    : 「(驚いた表情で)いないの!?」


       彩香。門前の広場中央で、


彩香   : 「(無線機から顔を放し)風花。吉祥宮と連絡が取れないわ」


       彩香の視点から。遠く門番部屋前に風花達。


風花   : 「擾乱のせいよ。観測所までいけば有線が使えるから」

梢    : 「彩香、早う」


       彩香、近景。


彩香   : 「う、うん・・・」

       無線の呼び出しを切る。ピッという電子音。

     : 「うん!? 何、この臭い?」


       西宮門。ビシッと鋭い音を立てる。


       振り仰ぐ彩香。いぶかしげな表情。


       西宮門。バン! という音と共に門扉に亀裂が走る。


       彩香、驚いて口許に手を当てる。


彩香   : 「(風花らの方を振り返って)風花! 外に出ては駄目!!」


       西宮門、門扉が割れて火竜が顔を覗かす。

       火竜、更に門扉を引き裂いて咆哮する。


火竜   : 「ギャアアアアアア!」


       風花、雫、梢。驚いて、


風花   : 「か、火竜!」

雫    : 「第4天上界に!?」


       彩香、風花達の所へ駆け寄ろうとする。


       火竜、片足で門扉を蹴り飛ばす。


       厚い板材が、地響きをたてて彩香の行く手に倒れて来る。


彩香   : 「キャーッ」


       門番部屋の前の風花達


風花   : 「彩香!」


       風花らの前に、太い柱材が倒れてくる。


梢    : 「キャッ!」


       火竜、門内に歩み入る。

       火竜は、頭頂部までで2m強。全長6m程、尾が長い。肩に巨大な翼、戦闘機の様な三角翼。全身は赤く体毛はなく、背中のみが黒く硬質で、鼻先から頭頂、背中、尾の先にかけて一列に短い角が並ぶ。尾の先端には5本の骨が突き出し、その間に膜状の方向舵。上下肢には3本の巨大な爪。特に上肢の爪は2本が退化し1本が剣の様に長く発達している。


       彩香、崩れて来る建材を避けて、尻餅をつく。

       ズームアウト。彩香を見る火竜の後頭部。


       彩香、アップ。仰向けに倒れて、青ざめる。


彩香   : 「あ、あ‥‥!」


       火竜、正面。頭を下げる。鼻先から背中にかけての角がスパークを放つ。

       火竜、頭を上げる。大口を開けて咆哮する。


火竜   : 「ギャアアアアア!!」


       彩香、クローズアップ。


彩香   : 「きゃーっ!」


       彩香、地面につんのめる様にして逃げようとする。


       火竜、流れる様な動きで彩香を追う。


火竜   : 「ギャアア!」


       彩香の後方に追い付く火竜。左爪が彩香の羽衣を引き裂く。

       火竜、全身で彩香にのしかかる。彩香、路面にうつぶせに倒れる。

       火竜、彩香の笠に咬み付く。


彩香   : 「いやあ!」


       火竜、彩香の笠を力任せに引き裂く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る