第1話 夏の始まり(3/11)
■シーン4■ 吉祥宮の門外
吉祥宮外観。
風が吹き荒れている。正門の脇の小扉が開いて、4人の天女が宮から出て来る。
梢と彩香、風を受けて、顔の前に小手をかざす。彩香の垂衣がまくれ上がる。
梢 : 「うわっ!」
風花 : 「(あとの3人に振り返って)行くわよ。飛ばされない様に気をつけて」
風花の背中。一瞬白い光に包まれ、肩衣の下から翼が伸びる。肩につけた羽衣もくるぶしに届くほどに伸びる。羽ばたきを一つして飛び立つ。
残った3人も風花にならって飛び立つ。
第3天上界、都大路俯瞰。
強風の中、4人の天女が建物の外壁に沿う様にして飛ぶ。前から、風花、雫、梢、彩香。
眼下に伸びる広い街路。人影はまばら。皆、風をよけて建物に沿うように歩いている。一台の牛車が風に抗しながらゆっくりと進んでいる。
天女達の背中の翼は鶴の様に翼長が長い。どちらかといえば旅客機の様な翼。羽衣は安定翼・方向舵として機能している事が分かる。
梢 : 「そうや! この間待ち伏せしとった『かわら版』記者はどないなったん?」
彩香 : 「あ! あの時‥‥。済みませんでした」
梢 : 「ええやん、彩香が謝らんでも。吉祥天女様も、彩香を叱らんでもええのになぁ?」
彩香 : 「でも‥‥、やっぱり困ります、ああいうの」
風花 : 「(振り返りつつ)そこの二人、しゃべっていない! 第4天上界に上がるわよ!」
風花と雫、軽く目を合わせる。雫が、軽く上昇して速度を落とすと、梢を先行させて自分は最後尾につく。
四人の天女、町並みを抜けて都の門外へ。
■シーン5■ 再び、吉祥宮観測中枢。
注意表示が出て警報が鳴り響く。
天女、緊張した表情で振り返る。
天女 : 「吉祥天女様、第7天上界の結界が破れました。上部天上界の電磁気圧が急激に上がっています」
吉祥天女 : 「(驚き顔で)なんですって! 早過ぎます。間違いはありませんか?」
天女 : 「はい!」
吉祥天女 : 「急いで、西方楽土に出動中の帝釈天殿の部隊にデータを送りなさい」
天女 : 「はい!」
大あわてで操作卓に向かう
吉祥天女 : 「それと、風花達に第3天上界に戻る様に伝えるのです!」
■シーン6■ 国道135号
啓吾、路肩にバイクを止めて小型ラジオを聞いている。
ラジオ : 「続いて、小田原厚木道路では(雑音に掻き消える)」
啓吾 : 「んん? 何だよ?」
ラジオを耳に当ててみる。同調ダイヤルを調整する。
あきらめた顔で、
「ま、いいか」
ラジオをキスリングに突っ込みつつ、
「『ゴー、ゴー、レッツゴー』っだ」*1
BGM、藤岡弘『レッツゴーライダーキック』、2小節。
ハンドルに架けたヘルメットを取り、被りかけて、ふと手を止めて、かなたを見やる。
相模湾の海。波頭がきらきらと輝く。
啓吾 : 「今年の夏は暑そうだな‥‥」
ヘルメットを燃料タンクの上に下ろす。寂しげな表情。
: 「伊東で過ごすのもいいかな‥‥」
啓吾、思い直したように再びヘルメットをしてバイクを発進させる。
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